まずなんの変哲もない朝食を摂ろう。
白いお皿に目玉焼き。夕飯の残りの玉ねぎスープ。あなたの好きな珈琲と私の好きな紅茶を淹れて、ふたりで食卓を囲むのだ。
ナイフとフォークで半熟の黄身を半分にするあなたを眺めながら、あたたかな紅茶を飲んでいたい。
それが終わったら部屋を出て、近所の公園で散歩をする。そろそろ見納めの桜の花びらをつまむあなたの隣で、あなたの手のひらの温度を感じていたい。
ふたりの部屋に戻っても、世界の終わりなんて知らない顔をして、いつも通りの日々を続けるのだ。
おなじベッドに潜り込んで、優しい微睡みに沈みたかった。
来なかった世界の終わり。
あなたのいない静かな朝に。
私はひとり珈琲を淹れて、窓から見える雲ひとつない空を見上げていた。
6/7/2023, 3:43:10 PM