未知亜

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「良い香りだね」
「でしょ? 誰が作ったと思ってんの?」
「そうでした」
「ふふっ。世界に一個しかないキャンドルだからね」
「え? まじで」
「まじで。今日のために作った」
「もったいない、消そう!」
「は?」
「だって、来年も使いたい!」
「大丈夫! また作るから」
「ほんと? おんなじやつだよ? この、緑と赤でキラキラしてる感じも、淡い黄色がいい感じにグラデってるのもだよ? この炎の感じもだよ?」
「そこまでは無理」
「えー、だったら——」
「来年はまたその時の気持ちで作るから。おんなじにはならないよ」
「……そっか」
「消える頃、ちょうどクリスマス当日になると思う」
「じゃ、それまでお喋りしてようよ」
「いいよ」
「……あのね、昔ね、すごく気が合うと思ってた人がいたんだ」
「うん」
「好きなものが同じで、食事に行ったら同じメニューで迷ったりして。足して分けるとちょうどいいねって」
「うん」
「でも、そのうち違うことが出てきてさ。当たり前だよね、違う人間なんだから」
「……うん」
「結局、向こうが私に合わせてくれてただけだったんだよね」
「……それで?」
「うん、それで思った。 誰かと本当に気が合うことって、同じもの見て同じものを食べて『幸せだね、美味しいね』って同じバランスで分かち合える相手なんて、いないんじゃないかって」
「ふーん……」
「でも、この人はもしかしたらそうかもしれないぞって、ずっと考えたくはあって。考えてるうちに人生終わるくらいがちょうどいいのかもって」
「うん?」
「だからね」
「うん」
「ありがと! ってこと!」

 抱きついた風で揺れるキャンドル。
 Happy Merry Christmas🎄✨️

『揺れるキャンドル』

12/24/2025, 9:59:02 AM