のぞみ

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窓越しに見えるのは君の誰よりも努力している強い姿でした。

今日も私は誰もいない図書館から1人、バスケットを練習しているかっこいい横顔を見つめる。
私が今見つめているのは、川上翔吾(かわかみしょうご)だ。同じ学年の別のクラスの同級生。
隣のクラスでもあんまり目立たないポジションにいる男子だ。でも、誰よりも早く来て、準備して努力している彼を見るのが私の日課だった。彼を見つめていると、彼以外の部員がやってくる。
でも、彼達はまるで翔吾がいることさえ気づいていないように練習している。
まるで、小学生の女子が好きな男の子を取られたからってみんなで無視するような態度だ。
はぁー、本当にイライラする。
無視して、同じ部員の仲間にですら声をかけない。
翔吾は1番最初に来て何もかも準備してるのに。
お礼の一つもない。見てて呆れる。
「ピピピー、ピピピー」
イライラしながらも練習をしている翔吾を見ているとあらかじめ設定しておいたタイマーがなった。
もう、戻らないといけない時間か。
図書館には時計がないからこうして、タイマーを測っていられる時間を決めているのだ。
もっと見ていたかった。
戻りたくない。
ため息をつき、重たい腰を上げて教室に向かう。
教室に入るとみんなが近くによってくる。
「紗夏ー (さなつ) どこ行ってたの?
毎日この朝の時間にいなくなるよねー?
荷物置いてどこ行ってんのよー?」
そんなクラスメイトの言葉に笑って返す。
「別に〜、てかさ、昨日のドラマ見た!?
めっちゃ最高じゃない?かっこよすぎてやばすぎー」
図書館に行ってたことは言いたくなくて、言えなくて話を変える。
そしたら何人かの女子がまた集まってきた。
「紗夏見るの早すぎー!もう見たの?」
「見た見た!!私の〇〇くんへの愛は大きいからね!
今週の〇〇くんもやばかったよー
見てない人即見るべし!」
そうやって、クラスメイトと長い間話していると5分前のチャイムがなった。
席について、次の授業の準備をしていると
「さすが一、、クラスの人気者!やっぱり明るくて喋りやすいからみんなが集まってくんのかな!」
後ろの席の海(かい)が喋りかけてきた。
「何〜、おだてても何も見せてやんないぞー」
どうせまた、宿題忘れて来たんだろうけど。
「そんなこと言うなよー、みんなやってなくて頼れるのお前だけなんだよー、一生のお願い!頼む!!」
仕方ないな。
「もうしょうがないな。はい、ここねー」
そう言って見せてやると、他の男子達も俺も俺も!って言って私のノートを囲む。
はぁー、自分でやってこいよ。
人がやったやつを当然かのように写しやがって!
そんなことを思いながらも見せる私も私だ。
授業まで残り少ない時間を終えて、授業が始まる。
その時の授業はよく生徒にあててくる先生の英語の授業で私も当てられた。
「はいー、ここの問題白石、訳せ。」
だる〜
めんどくさく思いながらも立って答える。
「ここは〜〜〜で〜である。」
訳せと言われたところを迷いなく読む。すると
「おー、完璧だ。」
褒められた。
「まぁ、先生の教え方が良いからですかねー
いつも、ありがとうございます!せんせー?」笑顔で言うと、先生は褒められて機嫌が良くなったのか
そこからは笑顔で授業をしていた。
ほんと、単純で扱いやすー。
そんなふうに授業を終えると、先生に呼び出された。
「白石ー、ちょっと、このプリント準備室まで運んでくれんかー?ちょうど、係の子が休んでてな。」
めんどくさ。私じゃなくても他の奴らに頼めよ。
そう思ったけど、私は笑顔で言う。
「はーい、先生100円!」
「バカ言えー、そっからそこだ一頼むぞー」
そんなふうに先生を冗談言って笑う。
すると、クラスの男子が声をかけてきてくれた。
「紗夏手伝おうかー、1人じゃ大変じゃね?」
ぉーありがたい。じゃあ、少し持ってもらおうかな?
「ありがと、じゃあ、」
お願いっていいかけると、その男子は他の女子から呼ばれた。確か、付き合ってる彼女だったかな?
「ねー、ちょっと来てよー」
さすがに呼ばれてるのに手伝わせるのは気が引ける。
「行ってきていいよー1人でも大丈夫だしー」
そう言うとその男子は申し訳なさそうな顔して、彼女の方へ向かった。
「はぁー、行くか。」
私はノートを抱えて準備室へ急ぐ。
別のクラスのやつから時折絡まれながらも、準備室に着いてノートをおろす。
「はー、めんどくさい。他の奴だって暇そうにしてたじゃん。その子達に頼んでよ。あの単純教師一。」
愚痴にながらもノートを置いて準備室を出る。
私もそんな言うなら別になんか適当に理由つけて断ればいいのに。
ただ、笑顔でふざけていいですよーなんて、良い子ぶっちゃって。
時々、疲れる。

みんなに笑顔振りまいて、明るくて喋りやすい自分を演じるのは。
だけど、そんな自分からなかなか抜け出せないしょうもない私だ。そんな自分が大っ嫌いだ。
暗い気持ちになりながら図書館へ向かった。
なぜか、無性に今、翔吾の姿が見たくなったんだ。
今日も練習やってるかな?
今日も誰1人いない図書館に入っていつもの席に座って彼の姿を見る。今日は練習はないみたいだ。
けど、翔吾は自主練をしていた。
バスケットの基本から初めて、シュートをうっていた。
そんな今日も地道に努力している翔吾の姿を見て少しだけ心が明るくなった。
次の日
昼休みを沢山の友達と過ごしている時
「ねぇ〜ね!
今、バスケ部が1年生対2年生で対決ゲームしてるんだって!
みんな見に行って良いみたいだし見に行こうよ!」
バスケ部の話が出てきて思わずびっくりして反応してしまう。
「えっ?バスケ部が?」
「うん。今やってるんだって!
てか、そんな反応して興味あるの?
まさか、とうとう紗夏にも気になる人ができたのか?」
ギクっ、しまった!明らかにこんな反応するべきじゃなかった!
「まさかー、好きな人なんてできてないし〜
珍しいと思っただけだし。」
慌てて弁解すると友達はニヤニヤして
「えー、ほんとかな?
とうとう、紗夏にも春が来たか!余計に楽しみだ?」
違うってー!からかわれながら私達は体育館の中に入って見えやすい所へ移動した。
私の目は自然と翔吾と方にいっていた。
いつも見ていることもありすぐ見つけられた。
隣で友達がキャーキャー言ってる中、私はドリブルをしている翔吾のほうを見つめる。
「ねー、ねー、みて!紗夏!!
めっちゃ、かっこいいんだけど宗治(そうじ)先輩!」
あぁ、あの先輩か。私はあんまり好きじゃない。いつも、朝練の時絶対翔吾の次に来るのに準備されてるのが当たり前みたいに他の子と練習してるからだ。
そして、隣に一生懸命練習している人がいるのにずっと、ふざけて練習しない時だってあるし。いつだって、真面目に練習していない。
「うん、そうだねー」
適当に返事をして、眺めていると少ししてからちゃんとした1年生対2年生のゲームが始まった。
試合が始まってあと10分ぐらい残っている時翔吾がシュートを外してしまった。
「ねぇ〜、あの子さっきからあんまり動けてないし、チームの役に立ってないよね?
誰だっけ?あの他のクラスのー」
他の友達のそんな声が聞こえてきた。
何も知らないくせに、そんなこと言わないで。
それに全然そんなことないし。
確かにシュートは外したけど、周りを見てどういう動きをすればチームがいい方にいくか考えて動いてると思うし。誰よりも努力してる。
私はそんなふうに言われてムカついて思わず言ってしまった。
「別に、誰にでも失敗はあるでしょ。
人が頑張ってる姿を侮辱するなんてサイテー
しかも全然役に立ってない訳じゃないし。
何も知らないくせにそんなこと言わないで。」
しまった。ついついムカついて言ってしまった。恐る恐る友達の方を見ると
びっくりした顔でこっちを見ていた。
「どうしたの?急に?しかも、あの地味な子を庇うなんて?怒るなんて珍しい。紗夏らしくなくない?」
まだ、全然私の言葉が響いていなくて呆れてもっと言おうかと思ったけど、友達の最後の 紗夏らしくない と言った言葉に冷静になって、
笑って返した。
「なんてーね!あんたねー、そんな言い方しちゃいけませんよ!お母さんはそんな子に育てた覚えはありません!」
いつもの私に戻れて、ほっとしていた。
友達もそんな私の様子にほっとしたようにふざけて、言葉を返してきた。
そして、バスケ部のゲームが終わって1人になれる場所になった時、後悔した。なんであんな言い方したんだろう。
でも、別にあんなことを言ったのは後悔していない。頑張ってる人を見てあんな言う友達はサイテーだし、間違ったことは言ってない。
逆に、図書館であんなに頑張ってる姿を見て何も言わない人はいないだろう。
だからって言い方ってもんがあっただろう。
私のバカ!学校では明るくて誰とでも喋れるのが私。それが私。そうじゃなくちゃいけないの。あんな私は求められていないのだから。
昔のことを思いだしそうになって慌ててもう考えるのをやめる。
深呼吸をして教室に戻った。
教室でいつもと同じように授業を受けてそして放課後になり、図書館に向かい図書館で1人翔吾を見る。
いつもみたいにただ翔吾の姿をぼっーと見ていると翔吾がふとこっちを向いた。
今までこんなことなかったから驚いた。
翔吾はこっちを向いてびっくりしたように目を開いて固まっていた。
私達はどちらから目を逸らさずにただただ見つめあっていた。
すると、いつもの合図のタイマーがなってその音で我にかえった。
ほんとうにびっくりしたな。
目が合うなんてはじめてだった。
でも、少しでも翔吾と目が合ったのが嬉しかった。
今まで感じたことがない、感じがして具体的には表せれないけど、なんだかむずむずしながらこの日は家に帰った。
この日を栄に私は勇気を出して話しかけて、いつの間にか喋るようになっていた。
ある日申し訳なさそうな顔で言ってきた。
「紗夏さんと話すのは申し訳ないです。
俺といると、紗夏さんまで悪く思われると思います。俺って、地味で何も取りえがない人間なので。」
なんでそんなこというの?
もしかして、私が嫌になった?
私は楽しかったけど、そう思ってたのは私だけだった?
悲しい気持ちになって俯いていると
「え〜、どうしたの?
隣のクラスの子だっけ?こんな子と紗夏が話してるの初めて見たよ~」
私の友達が何人かでこっちによってきて笑っていた。
何で?別によくない?私の勝手じゃん。
しかも、翔吾のこと地味な子って目の前に本人がいるのに。しかも普通に言うとかサイテー。
「あのさぁ、この前から思ってたけど人のこと見た目で判断するのはやめて。
バスケの試合見に行った時もそんなこと言ってたよね?しかも、私が誰と話してたって私の勝手だし。私の好きで話してるの。それをそんなふうに翔吾のこと悪く言わないで。」
しまった。
そう思った時にはもう遅かった。
みんなは私の言葉に驚いていた。
そのうちの1人が急にニヤニヤしだして
「え〜、そんなふうに言うんだ~。
なんか、びっくり〜。
もしかして、紗夏その子のこと好きだったりして〜!
でも、私達が悪かったよね。
ごめんね?」
こんなにすんなり謝るとは思わなかった。
でも、何故か嫌な予感が止まらない。
「い、いえ、大丈夫です。」
翔吾は焦った顔をして私にぺこりと一礼して去っていった。
「仲良いの?紗夏はあの子と。」
いつまでもさっきのことを引きずるのはやめよう。そう思い、気持ちを切り替えて笑顔で頷いた。
「うん、最近喋るようになったんだ。」
そういうと以外〜ってみんなから笑われた。


次の日
私は図書館から翔吾を見てから、教室に向かう。いつものように教室に入る。
あれ?なんで?
いつもは即話しかけてきてくれるみんなが今日は見向きもせずに席で笑ってる。
「おはよー!」
不思議に思いながらもみんなに声をかけると
みんな挨拶は返してくれるけど、どこかぎこちない。
私なんかした?
もしかして、昨日のが原因?
でも、そんなことだけで別によそよそしてくなったりしないよね?
しかも昨日私が少し言い過ぎちゃった時、今来てる子はいなかったし。
そんなことを考えているとチャイムがなった。
結局、その朝は誰かと話すことなく気づいたら時間が経っていた。
それから休み時間も昼休みも誰からも話しかけてもらえないし、私もそんな状況に怖くなって喋りかけれなかった。
昼休みは図書館に行った。
今日は翔吾は練習していなかった。
今日はまともな会話を友達としていないからか、いつもは居心地のいいこの場所も今日は何だか無性に寂しく、虚しい。
やっぱり昨日、言い過ぎたのが原因だろうか?
でも、そんなことでクラスの女子全員がよそよそしくなるのはおかしい。
しかも、私の言ったことは別に間違っていない。
その日は何でか分からないまま一日を過ごしてまるで、自分がいないかのような時間だった。
私は学校が終わり、帰っている時ずっと考えていた。そして、1つの考えが思い浮かんだ。
翔吾と喋ってるところを見られたから?
だって、昨日は普通にみんなと喋ってたんだ。
それなのに今日からみんなが急に喋ってこなくなったのは、昨日の出来事があってから。
でも、なんでそんな翔吾を庇ったからってみんなは私に急によそよそしくなるの?
ずっと考えて歩いていると、誰かとぶつかった。
「わっ、いてて、ごめんなさい。」
慌てて謝って相手の顔を見るとそれは翔吾だった。
「えっ?翔吾?」
何でここにいるんだろう?
翔吾の家って逆方向じゃないの?
「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫、翔吾はなんでここに?」
翔吾に聞くと
「あの、ちょっと、時間ありませんか?
話したいことがあるんです。」
何だろう?
でも、今日こんなに喋ったのは翔吾ぐらいで私は嬉しくなって頷いた。
私達は近くの公園で話すことにして、公園に移動する。
公園に移動してすぐ翔吾は謝ってきた。
「あの!ごめんなさい。
今日、紗夏さんのクラスの子が紗夏さんに対して様子が変だったのは俺のせいなんです。
俺みたいなのが紗夏さんと仲良くしてるから、
だから、だから・・・・・・・」
ん?どう言うこと?何で翔吾が今日のこと知ってんの?
「どういうこと?何で翔吾がそんなこと?」
私が聞くと、翔吾は躊躇うように口を開いては閉じて、何かを言おうとしていた。
「どうしたの?何か知ってるんなら教えて?」
もう一度聞くと、翔吾は覚悟を決めたように言った。
「あの今日、紗夏さんとこのあの間、話してた時にいた子達が話していたのを聞いたんです。」
翔吾は私の様子を伺いながら、言う。
「今日、昼休みのことだったんです。」
翔吾によると、
今日翔吾が偶然私の友達の話を聞いてこう話していたらしい。
「この間はびっくりしたよね!
紗夏があの地味な男子と仲良いなんて。
しかも、めっちゃむきになってあの男子のこと庇ってたし。
紗夏ってさ、いろんな男子と仲良くしてるよね〜?いつも、自分が1番って思ってそう。
しかも、紗夏っていろんな男子に媚び売って仲良くしてるよねーいつもは私も一緒にいて楽しかったから一緒にいたけど、誰とでもあんなふうに接してそして、少し文句言われたからってこの間はムキになってイラついてきて何様だって感じだよねー自分が女王様だとでも思ってんのかねー」
「分かる、分かる!いつも自分が正しいって感じだよねー」
翔吾はそれを聞いて自分のせいって思ったんだ。
「別に翔吾のせいじゃないじゃん。
翔吾は普通に私と喋ってただけだし、ただ昨日話してた場面をたまたま見られてこの状況ってだけで。ていうか、大丈夫だよ!
そんなこと言われてたなんてね?
うわべだけだったのかよ!
とにかく絶対翔吾のせいじゃないから気にしないでよ!」
私が笑顔でそう言うと翔吾は一瞬辛そうに顔を歪めたけど、頷いた。
「はい、とにかくごめんなさい。
ありがとうございます。」
ぺこりと頭を下げて去っていった。
翔吾を巻き込んじゃったな。
でも、今日の女子達の様子の理由はそう言うことだったのか。
あの時いた女子はクラスでも結構中心にいた女子だったから、すぐ女子の間ではそう言う雰囲気になる。
すぐ、手の平返された。
正直、少しショックだったけど、自分が悪いことも分かってた。
この間の翔吾のことがなくたって、私は本当の自分で接してなかったんだから。
彼女達を一方的に責めるのは違う。
私が接する男子への対応がそんなふうに見えたのも''明るくて喋りやすい自分''にこだわり過ぎてそう見えてたかもしれない。
全部、私は本物の私じゃなくて、本当の自分じゃない偽ってた私が招いてたことだ。
これは罰だったのかもしれない。
昔のことをいつまでも引きずって前に進まずただ自分を偽って、仲良くしてくれる友達に甘えてた結果がこれだ。
そういえば昔もこんなことあったな。
思えば、それが自分を偽ってただ笑顔を振りまいて、無理にみんなと笑うようになったきっかけだったような気がする。


あれは中学2年の頃だったかな。
私はクラスの中でもクラスメイトさえ、あんな子いたっけ?って言われるほど地味で目立たなかった。
更に人見知りなこともあって友達はちゃんと話せる人が3人ぐらい。
これと言った特技や好きなこともなくなんの取り柄もない自分が嫌でしょうがなかった。
まるで、劇で明るくて輝いている主人公を目立たせるための役でいえば、木。
ちっぽけな自分。
そんな私が高校生で偽って本当じゃない私を無理に演じてみんなから明るくて喋りやすいって言ってくれるような子になりたいとおもって動きだしたきっかけは恋だった。好きな男の子に少しでも見てほしい、そう思ってよく分からなかったオシャレや流行の物を気にかけたりした。
でも、今まで全然目立たなかった私が頑張ったからといって、そんなに友達は増えなかったし、あまりオシャレで可愛くもなれなかった。
それでも、私が好きだった男子は何故か告白してきてくれた。
不思議でしょうがなかったけど、好きだったから当然オッケー。私達は付き合って晴れて恋人関係になったけど、そんなに幸せの日々は続かなかった。やっぱり好きだったのは私だけだっだみたいで、付き合っていた彼氏が友達との賭けで私と付き合ってくれていたということを知った。
やっぱり。私は悲しい気持ちより納得してすっきりした気持ちの方が大きかった。
私何かが好きになってもらえる訳ない。
けれど、私はどこから出てきたのか私の意地がでて、悔しさを武器に足掻いて足掻きまくった。そうするといつしか友達も増えてて中学3年の終わりぐらいには地味で目立たなかった私ら消えて、”明るくて、みんなが喋りやすい私"
が出来上がってそのまま高校でも友達関係では困らなかった、と言う訳だ。
でも、目立ってて昔の私の理想になったって苦しかった。
私はそんな元から明るくて良い子な訳じゃないから、今もこんなにメガティブな気持ちになって落ち込むし結果、昔より変わっても上辺だけで友達に接してたからこの結果だ。
だから翔吾の姿を昔の自分に重ねてそれでも、頑張って努力してる姿を見ているのが心地よかったのかもしれない。
そして、翔吾をそれで巻き込んだのも私。
私は昔から何も変わってないな。
変わったとしたら上辺だけ。そんな自分が本当に嫌いだ。
私は理由がわかってしまったこともあって、明日の学校での日々を想像できて、ため息をついて家に帰った。


次の日
私は重たい体をあげて学校に向かった。
怖いな。
理由を知ると、昔のダメでつまらない自分が出ちゃうんじゃないかって怖い。
切り替えるんだ。明るく笑顔で。
自分に言い聞かせながら教室に入ってドキドキしながらも挨拶をしていく。
一瞬、目を向けて挨拶を返してくれない子もいた。返してくれた子もいたけど、ぎこちなかった。そんな様子に怖くなって、自分から話しかけていける訳もなく、自分の机で勉強をする。
ただでさえ、無視する人だっているのに。
話しかけて無視されたらどうしよう。
挨拶さえ返してもらえなかったらどうしよう。
そんなマイナスの考えが私を動かさなかった。
そんな時、数日前に翔吾と私が話していた時に話しかけてきた、こうなるきっかけとも言える彼女達が入ってきた。
「みんなおはよー。見た!?昨日のドラマ!」
入ってきた彼女達に一瞬にして先に来ていた女子達は集まる。
その時、登校してきた彼女達は私の方を見て、一瞬バカにするように笑ったような・・・・気がした。
私は横で前私も混じってドラマの話をしていたような感じで楽しく話していた。
惨めだな。
自分が悪い。でも、そんなたったちょっとの出来事で私のクラスでの位置が変わるなんて。
何日か前の私だったら想像もつかなかっただろうな。
私だって、悪い、悪いけど・・・・・。
みんなは何でじゃあ、私と今まで話してたの?
みんなが話してたからそんな私のことが気に食わないと思いながらも私のこと好き好きーってして私の所に集まってこれまで通り仲良くしてた?
もしも、この間翔吾と私が一緒にいるところを見てなかったらこんなは風にはなってなかった?私のことを調子乗ってるとか、男子に媚び売ってるとか一部の女子は思ってたんなら、翔吾との件はただのきっかけだ。
それなのに、今回のことがなかったらそのままの状態だった?何て、醜いんだろう。
自分も悪いことは自覚していながらも女子達の態度に不満が出てきた時だった。
そんな時。
急に大きな音を立てて、ドアが開いて驚いてドアの方を見る。
すると、そこには珍しくイラついた顔をした翔吾がいた。
もう、騒がしかった教室は静まり返っていた。


「見てました。あなた達の紗夏さんへの態度。
何でですか?俺と関わってることを知ったから。俺が地味だから?
あなた達どんだけ馬鹿なんですか?そして、高校生ですよね?俺のことはどう言っても構いませんけど、人を見た目で判断して、その人の本当の気持ちを見ようとしない。
とても、高校生のやることとは思えない。
陰で調子乗ってるとか、ずっと気に入らなかったとか、じゃあ何で一緒にいるんだよ?
何で一緒に笑ってる?
みんなみんな、誰が1人が無視し始めたらみんな同じようにするのか?
自分は自分、人は人だろ。
ただ、みんながこうしてるから自分もなんて、そんなことはしょーもなさすぎです。」
びっくりした。
翔吾がまさか、こんなこと言うなんて。
嬉しかった。
けど、それと同時に私の心にも翔吾の言葉は刺さった。
『自分は自分。人は人。相手の本当の心を見ろ。』
ほんとにそうだ。
人とばっかり比べて、馬鹿みたい。
「紗夏さん。ちょっといいですか?」
翔吾が泣きそうな顔をして私の机の前に立っていた。
「うん。」
私達は人がいないところまで移動した。
「あの・・・・。
すみません。あんな偉そうなこと言って
迷惑でしたよね?」
そんなことない。
嬉しかったのに。
翔吾はさっきキレていたとは思えないほどに落ち込んだようだった。
いつもの翔吾だな。
「嬉しかったよ。あんなふうに、怒ってくれて。かっこよかったし。」
私がそういうと、恥ずかしそうに笑って言う。
「ありがとうございます。教室での態度を見ててあまりにも酷かったので腹が立って・・・
今から僕、すごい偉そうなこと言ってもいいですか?あんなこと言って今更ですけど。」
なんだろう?
ちょっと怖かったけど、頷いて先を促した。
「紗夏はありのままの方がいいです。
今の紗夏さんも魅力的ですけど、
無理して変えなくて、そのままが。
頑張ってきたのはわかります。
でも、苦しくなった時は無理して笑わなくていいし、誘いを断ってもいいんです。」
なんで?何でそのことを知っているの?
中学の頃の私を知っている?
そんな疑問が顔に出ていたのか、翔吾は話し始めた。
「紗夏さんは覚えてないかと思いますけど、僕たち中学校一緒だったんですよ?」
え?同じ学校?翔吾が?
「同じ学校って言っても関わったのは一度だけでした。紗夏さんが知らなくてもおかしくないです。で、中学だけでなく偶然高校も同じだったので。昔のことも知っていました。」
一回会ったことがあるんだ。全然覚えてないな。それで私のことも知ってたんだ。
私が遠くから練習姿を見てただけで、喋ったのは高校に入ってから初めてだと思ってた。
「初めはびっくりしました。かなり雰囲気が変わってて、少し気になったので見ていたんです。けど見てて苦しそうに見えたんです。どんなお願いをされても笑顔でうなずいて友達と接してる時もずっと笑顔で。
俺の考えすぎだったらごめんなさい。
でも、図書館でいつもバスケ部の練習姿見てることは気づいてて誰もこない1人の場所のようだったのであそこを疲れた時の居場所にしてるんだと思ったんです。」
そうだったんだ。
私の気持ちまで分かってるなんて。
「声をかけて、楽にしてあげたくても俺はこんなんだし。紗夏さんについ最近、高校生の時話しかけられて話してからやっと救いになれるかもって、思いました。」 
なんで?そんなにしてくれる?
「なんでなの?何でそんなに私のためにみんなを怒ったり、気にかけてくれるの?」
私が聞くと、翔吾は急に真剣な顔をして言った。
「中学生の時の紗夏さんも、みんなを笑顔にできる紗夏さんも、無理してそれでも頑張る紗夏さんがすべて、好きだから。」
嘘。嬉しい。
今まで、翔吾の気持ちがわからなかったけど今告白されてやっと、分かった気がする。
ーー恋、だ。
私も翔吾が好きなんだ。
思えばずっと、私は誰からありのままでいいって言って欲しかったのかもしれない。
無理に自分を変えようとしたのもすべて、自分そのものを認めてほしかった。
「ありがとう。私も好きです。」

いつだってかっこよく、強い翔吾を見つめて。
私は微笑んだ。


                      end



完結しました!
物語であやふやな所や、文字で不自然なところは頑張ってなくしたつもりですか、読んでくれた方の中には読みにくいと思った人もいたかも知れません。
それでも、読んでくださった方には本当に感謝です。
ありがとうございました。



私の当たり前

当たり前って怖いよね。
これが当たり前だって、他の人が知ったらそれに答えないとって思う。

7/9/2023, 10:39:00 AM