ひら

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きっと私の人生の終わりは、自らの手によるものだと思う。


『他者によって生み出されて、強制的に始まった人生を自分で終わらせるなんて、すごく綺麗じゃない?』
そう言ったあなた。


出逢ったのは、肌寒さを感じるようになった夏の夜のこと。
わけもなく涙を流しながら帰路に着く私に、目を奪われたらしい。
同じ人間の気がしたって。
その勘は当たりで、本当に同じ考えを持っていた。


どうやら同じ方向に帰るようだ。
家は知らないが、人生観を語るのが帰り道のルーティーンになった。
T字路で左右に分かれる、ただそれだけの関係。






今日、あなたはいつもの場所に現れなかった。
周りを見渡すが、見つからない。
ちょっと待ってみる。






手に汗が滲み始める。
歯の奥が揺れる。
形だけの呼吸。


ふと風が吹く。
すっかり冷気を帯びていた。
ぐっと見上げると、建物の柵の外に立つあなた。
目が合った。
初めてちゃんと目を見た気がするよ。
いつもは横並びだから。

目に光がないのは、夜だからなんて理由じゃない。
この世界に持つ、希望にモヤがかかったようなそんな目をしていた。




一呼吸おいて、目を閉じて、前へと傾く体。





あっという間で、一瞬で。

あなたの息が止まった。
今までで一番、生きていると感じた。

9/8/2023, 3:30:02 PM