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【キャンドル】

薄暗い部屋の中でゆらゆら揺れる炎を見つめていると、あなたの優しさを思い出します。
ほんのりと温かく、そっと寄り添ってくれるような優しさには何度も癒されました。

けれど、それももう過去のこと。
あなたと会うことは二度とないのです。
一緒に過ごした時間は、確かにかけがえのないものでした。
それでも私は、あなたと別の道を行かなければなりません。

あなたは、またどこかで、私以外の誰かに優しく接しているでしょう。
私がそれを知ることはないけれど、でも。
その儚い炎のような優しさは、消えていないと信じています。
それでも私にとっては、触れられないのならば消えたようなもの。
触れることもできないのに、あなたの優しさのような炎がゆらゆら目の前で揺れているくらいなら。
どうかせめて、私の吐息で消させてください。

ふうっと息を吹きかけ、炎を吹き消します。
たった一つの灯さえも失って、部屋は真っ暗になりました。

闇の中で、私は本当に独りになりました。
あなたと同じ時間を過ごすことはもうないけれど、どうやってもあなたの存在は忘れられません。
きっと、私があなたの優しさを忘れることも出来ないでしょう。
だけどあなたの優しさに私が触れることは、やはり永遠にないのです。

さようなら、優しいあなた。
ありがとう、優しいあなた。
暗闇の中でたった独り、あなたの優しさをそっと思い出しながら。

11/19/2023, 10:59:56 AM