初音くろ

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《生きる意味》





生まれたときから体が弱かった。
人生の半分ほどはベッドの上の住人で。
家族にもたくさん心配と迷惑をかけていて。

それでも、生きることを諦められなかったのは……



「少し熱が下がってきたかな」

落ち着いた声で問われ、こくりと頷く。
高熱のピークは脱したようで、体はさっきまでより幾分か楽になっている。

心配そうに覗き込む大好きな人の顔にちりちりと罪悪感が疼いた。
でも、それと同じくらいに、嬉しい気持ちもある。
まだ彼の心はわたしから離れていないのだと実感して。

「いつもごめんね」
「謝るなって。こないだも言っただろ」
「そうだけど」
「ぼくの方こそ、ごめん」
「何が」

言いたいことは分かっていたけど、気づかぬふりで問い返す。

彼の回復魔法のおかげでわたしは生き永らえている。
彼の魔法がなかったら、きっと明日にもわたしの命は儚く消えてしまうだろう。

わたしが生きているのは彼のおかげ。
同時に、わたしが死ねないのは彼のせいでもある。

彼が魔法をかけるのを止めてしまえば、わたしはこれ以上病に苦しむことなく楽になれる。
彼は、自分のエゴがわたしを生かしているのだと、楽にしてやれないのだと、悔やんでいる。

でも、それはわたしもおんなじだ。
わたしが一言「楽にして」と言えば、きっと彼は叶えてくれる。
それを分かっていて、手を離してあげられない。

「安心して。わたしはずっと、死ぬまであなたのものだから」
「……うん」

わたしの生きる意味はあなたと共に在ること。
他人からどんなに憐れまれても、それでもこれがわたしたちの幸せの形。
死が二人を別つまで、わたしたちはお互いに縛りつけられ続ける。





4/27/2023, 10:32:57 AM