ハッピーエンド
私はハッピーエンドが嫌いだ。
だって私には縁遠いものだから。
私は、好きになった人に好きになってもらったことが無い。つまり、両想いになった事がない。
どんなに心を尽くしても、どんなに好みに近付こうとしても、いつも私じゃない誰かに取られ―――
「……何書いてんの?」
「ひゃあ!ちょ、ちょっと急に後ろから覗かないでよっ!」
「何々?……『私は、好きになった人に―――』」
「ギャー!声に出して読まないで!!」
「どゆこと?俺と君って、両想いじゃなかったってこと?」
「ちっ、ちがうの!これは創作で―――つまり、小説っ!小説書いてるの!」
「なんだ……びっくりした。俺、振られるのかとおもったし」
「そんなわけないよ!私が好きなのは……貴方なんだからさ」
「うん、安心した」
「もう……次は声かけてよね」
「はーい」
彼は、後ろから私をギュッと抱きしめた。目の前に回された左手の薬指に、白銀の光が見えた。同じものが、私の左手薬指にある。
そう、私達は―――ハッピーエンドの二人なのだから。
了
3/29/2024, 12:24:57 PM