川柳えむ

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 夏の空に立ち上った入道雲を眺める。
 あまりに爽やかな青空と流れてくる熱風に、くらりと一瞬めまいがする。
 眩しい。こんなに眩しかったっけ。

 私がいつも感じている世界は暗かった。夏休みに入り、毎日過ごしていたあの狭い教室から出て、少しだけ違う日常を過ごしている。
 今日は家族に頼まれて、外へと買い物に出てきた。誰かに会いたくなくて、急いで買い物を済ませる。
 重い荷物を持って、熱されたコンクリートの道を進む。
 日々のあの暗い世界が嘘かのように、世界は眩しく、そして、熱い。
 正直家まで持つ気がしない。
 途中でコンビニへ入り、アイスキャディーを購入した。
 近くの公園に設置されている東屋に入り、今しがた購入したそれを口にする。冷たくて甘い。涼しげな風が一瞬吹き抜けた気がした。

 早く帰らなきゃ。あまり人に会いたくないのに。
 でも、ちょっと休憩。
 青空には大きな入道雲。まるで綿菓子のような。いや、ふわふわなかき氷にも、ソフトクリームにも見える。
 あらやだ。もしかしてお腹空いているかしら? 今まさに、アイスキャディーを食べているのに。
 外に出れば、こんな世界が広がっていたのか。あの暗い教室から見ていた、いつもの風景と違う。
 夏はまだ始まったばかりだ。


『入道雲』

6/30/2024, 5:22:26 AM