『花束』
俺には、長年の友がいる
そいつは
いつからかひとりだった
家族が―――居ないのだ
俺の知らないところで
あいつはきっと頑張ってる
俺はあいつが落ち込んでるところを
ほとんど見たことがなかった
あったのは大怪我をした時か
うちの祖母が亡くなった時ぐらいだった
稼ぎがいい訳じゃないし
どちらかといえば運もない
だが、とても面倒見がよく
いくつになっても人懐っこいやつ
俺と同じように生きてきた
こんなオッサンおじさん同士になっても
あいつは、
うちの家族ぐるみで
いや、神族ぐるみで仲が良かった
下は子どもたちから
上はそれこそ曾祖母とも仲が良く
他人の家のことなのに
自分の家族のように接し
そして色んなことを助けてくれた
こんなやつ絶対誰も信じてくれない
だが、いたのだ
そんな絵に書いたような友が
俺には、
もったいないぐらいだ
そんなアイツが
――――――………人知れず旅立った
あいつとは年末年始を共にした
ほんと、ついこのないだまで
一緒にいたはずなのに
この数週間で、あいつは……
たった一人で旅立っていた―――
まるで、「俺が支えてくる!」と
祖母を隣で支えるために行ったかのよう
面倒見が良すぎる
本当に……面倒見が良すぎる
…………それはもしかしたら
奇跡的に自分たちだけの
特別な優しさだったかもしれないけど
でも自分たちとだけは
あいつは仲良くやっていけると言う
心の歯車が本当に噛み合っていたのだと
あいつには、親族がいない
だから式も行われず
ただ焼くだけのさよならになる…らしい
急なさよなら―――
急な別れ―――
涙は、
あいつ似合うまで全部抱えて持っていく
数十年分の感謝を込めて
あと少しだけ、待っててくれ
親愛なる―――友よ
〜シロツメ ナナシ〜
2/9/2026, 12:06:06 PM