かたいなか

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先月4月18日頃には、「無色の世界」というお題が配信されておりました。
今回のお題は正反対、「カラフル」とのこと。
おはなしをひとつ、ご紹介します。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
ここの法務部に、都内在住の稲荷子狐が、完全週休2日制でもって修行に出されておりました。

経理部の部長さんから書類のおつかいを頼まれたり
法務部に稲荷餅販売を敢行したらハウス食らったり
まだまだ修行開始から2ヶ月程度ですが、
それでもコンコン、稲荷子狐は一生懸命、自分に任されたお仕事を為しておりました。

ところでその日は週休2日の休日でして。

『ねぇ子狐くん、ちょっと、頼みがあるんだ』
子狐がぐーすぴ、子狐に与えられた個室でヘソ天キメてお昼寝しておると、
その個室を使っておった先代おばけが出てきて、申し訳無さそうに言いました。
『きみも、僕の隠しキッチンは使うだろう?
そろそろ、そのキッチンの調味料を、いくつか補充してきてほしいんだ』

おお!おもちゃ!
寝ぼけた子狐、おばけの足にガブッと噛みついて、
ぶんぶんぶんぶんぶん!ぶんぶん!
楽しそうに、遊びます。

『昔は福利厚生部の医療・医務課に頼んでたけど、
今はきっと、ゴーレム使いの局員に直接、採掘を頼んだほうが早いんだろうなぁ』
幽霊としては、慣れたものです。
だって幽霊、この2ヶ月で何度も何度もぶんぶんぶん、子狐に遊ばれておったのです。

振り回されている間の視界は、まさしくカラフル。
めくるめく色が高速で移動していって、お題回収も簡単に、カラフル絶叫マシーン状態です。

『ちゃんとお礼はするから頼んだよ、コンちゃん』

ちょーみりょー?ゴーレム?
子狐はひとまず、幽霊に言われたとおり、
世界線管理局のゴーレム使いに、とってって、ちってって。協力を要請しに行きました。
管理局のゴーレム使いに心当たりがあるのです。

とってって、ちってって、ちってって。
コンコン子狐は狐なので、匂いが分かります。
迷うことなく局員寮の、個室のとある一室を突き止めて、トントントン。
難なくゴーレムの絶賛メンテナンス中な局員を、見つけ出しました。

環境整備部のテキサストルネードです。
ビジネスネームが長いので、縮めてトルネです。

「昔は医務課に頼んでて、今はボクに頼んだほうが早い調味料?」
ああ!なるほど鉱石系調味料!
コンコン稲荷子狐の話を聞いたトルネは、すぐにその調味料が何なのか、気付きました。
岩塩や晶糖の類です。
魔法洞窟に産出する、食べられる宝石です。

「種類は、何も指定されてないんだよね?」
丁度良いや。この子の最終チェックにもなる。
トルネは相棒のゴーレムの、メンテナンスをチャチャっと終わらせて、
子狐と一緒に、局内に整えられた難民シェルターの、魔法洞窟のひとつに潜りました。
「よし。カラフルな宝石調味料を、とりに行こう」

高光度ライトを装備させて、脱出用ロープも定期的に設置させて、ガシンガシン、がしょんがしょん。
トルネと子狐を乗せたゴーレムは、ゆっくり、安全に洞窟の中を進みます。

「魔法洞窟はね、すごく微量だけど、地面や水たまりに毒が含まれてることがあるんだ」
宝石調味料の採掘にゴーレムを使う理由を、トルネは子狐に伝えました。
「ゴーレムが一緒に進んでくれることで、
洞窟の環境を壊すことなく、周囲の毒素の測定もしつつ、宝石を採掘できるんだよ」

さいわい、ここの毒性は、「微量」どころかゼロだったみたいだね。
トルネがそう言うと、ゴーレムはゆっくり立ち止まって、子狐とトルネを降ろしました。
安全な採掘場所に到達したのです。
高光度ライトに照らされた可食宝石たちは、カラフルな光を乱反射させて、
それはそれはもう、それは、美しいのでした。

「さて、採掘しよう!」
トルネの声は、明るく跳ねました。
「ピッケルを、力いっぱい振り下ろすんだ!
ゴーレムじゃないと採掘が難しいくらいだから、
優しくしないで、本当に力いっぱい下ろすんだよ」

5/2/2026, 7:15:49 AM