森羅秋

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明日、もし晴れたら


 食器を片付けを終えた中年女性は、台所からリビングに戻ってくるなり、四人がけテーブルの上に目をとめた。
 息子が一生懸命てるてる坊主を作っている。白い布にティシュを入れて頭を丸く作り、カラフルな紐で止めている。ネームペンの細いペン先で目と口を書き足し、笑顔のてるてる坊主が完成している。
 その数は7個。小学3年にもなれば手際良く、30分ほどで完成させたようだ。
 息子がリビングの窓を見る。つられて女性も窓の外をみる。小雨の粒が窓を濡らしていた。雫が垂れている窓を眺めた息子は、作ったばかりのてるてる坊主を手に持ち、トテ、トテと歩きながら窓枠へ向かう。
 何をするの。と問いかけると、てるてる坊主を飾りたい。と返事がくる。
 女性は首を傾げながら、手伝う。と椅子を片手に窓へ向かった。てるてる坊主を受け取りながら息子の足首に巻かれている包帯をみる。本当に吊るしていいの? と確認してみた。
 息子はうんと頷く。
「明日運動会あるでしょ? だから逆さまに飾って! 明日いっぱい大人しくしたら、包帯取って走っていいって言われたもん。ぼくもかけっこやりたい!」
 女性は、なるほど。と頷いて、てるてる坊主を逆さまに飾った。



 

8/1/2023, 3:13:11 PM