薄墨

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後ろ姿が見えない。
声も聞こえない。
残っているのは、足跡だけ。

足跡を消さないように、慎重に追いかける。
早く追いつきたいけど、足跡は消してしまいたくない。
あなたがここにいた、という痕跡を消すことはできない。

だから、必死に、けれど慎重に、一つ一つ、あなたの実績を追いかける。
あなたが今、どこを走っているか。
どれだけ前を走っているか、分からないけど。

それでも諦めたくはなかった。
どんなに離れていても、追いかけるのだけは、やめたくなかった。

あなたは優しかった。
もっと速く、もっと美しく、もっとぐんぐん走れるのに。
あなたは後輩の足並みに揃えてくれた。
丁寧に教えてくれ、助けてくれた。

だから、あなたが大きな世界に行けることになって、
私たちという枷から解き放たれて、
自由に走れるようになって、
あなたはあっという間に遠くへ行ってしまった。

けれど私は知っている。
あなたを。
周りの人々に気を使って、足を休めていたあなたの、疲れ切った顔を。
僻みや妬みに心を砕いて、一時的に走れなくなったあなたが流した涙を。

あなたは私の憧れで、そして私が最も理解したい人だったから。

だから、私はあなたを追いかける。
必ずあなたに追いついてみせる。
どんなに離れていても。

あなたが、泣いたり、疲れ切ったりした時に、隣であなたに肩を貸せるように。

4/27/2025, 5:22:37 AM