次郎

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『踊りませんか?』

ゆっくりと彼女の手を取って、

私は、踊りましょうと言うと

彼女は、少し恥ずかしいそうに俯きながらも、

手を優しく握り返した。


夕焼けが、彼女の頬を照らすと、

照れた彼女の頬も紅潮していくようだ。


長い間、

彼女と暮らしてきたのに

こんな風に紅潮する彼女を

間近で見たことがあっただろうかと

握られた手にじんわりと彼女の温かさを感じた。


彼女を身近に感じながら、

私の鼓動と彼女の鼓動が合わさって

ゆっくりと、音を奏でる。

同じように動いているようで、

全く違う音階が心地良い。


私は、長い間、

忘れていた温かくて心地よいこの感情に

泣きたくなって、鼻を啜ると

見上げた彼女の瞳に

夕焼けで紅潮した私が写る。


私は、少し笑いながら

彼女の手の温もりを

忘れないように包み込んだ。

10/4/2024, 2:57:49 PM