霜月 朔(創作)

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羅針盤



混沌の渦に佇む俺は、
迷いの闇を彷徨う。
まるで、くるくると廻る、
壊れた羅針盤の針のように。

東には、偏見が蔓る。
心まで切り刻む刃の様な、
歪んだ言葉が、渦巻き、
魂の色を単色に染め上げ、
他者を枠に押し込める。

北には、絶望が広がる。
人の温もりさえも、
氷の天秤で裁き、
吹き荒れる吹雪は、
身も心も氷柱に変える。

南には、飢渇が蔓延る。
慈しみの雫も消え、
情け容赦ない太陽は、
希望という命の水さえ奪い、
乾いた大地だけが果て無く続く。

西には、孤独が固まる。
古からの記憶は、
心の砦の扉を、固く閉ざし、
他者の足音を拒み、
深い静寂の闇に沈める。

くるくると廻る、
羅針盤の針。
何処を指したとしても、
希望という光なんて、
見つかりはしないんだ。

錆びた羅針盤を握り締め、
俺は、夜空を見上げる。
永遠の道標、北極星。
いつも、憧れだった君。

俺は迷いながらも、
歩き始める。
君の光に導かれるように。

壊れた羅針盤しか、
持たない俺には、
君こそが、永遠の光だから。

1/22/2025, 7:51:55 AM