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またいつか

「またいつか」彼女の別れの挨拶はいつもこれだった。皆とは違うどこか意味深な挨拶はいつも私を不安にさせた。だか、私の心配とは裏腹に彼女は毎日普通に来る。いつしかその挨拶にも違和感がなくなって私も「またいつか」とふざけ混じりにこたえていた矢先、彼女が来なくなった。突然だった。彼女が帰ってくることはなくそのまま卒業した。彼女と最後に交わした「またいつか」が私の頭から離れることはなかった。いつしか私は「またいつか」に恐怖を抱くようになった。見知らぬ人が交わす「またいつか」にも恐怖を抱くようになった。

生きるのがいつしか苦しくなった。
気がつけばマンションの最上階から飛び降りていた。意識が飛ぶ直前、彼女の声が聞こえた気がした。
「また会えたね」


7/22/2025, 10:59:40 AM