滝谷(shui)

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【空が泣く】

 しとしと、と言うよりはサラサラとした雪の日だった。
「お空が泣いてるよ」
 と言い出したのは俺に肩車されている姪っ子だ。
「空が? ただの雪だろ」
「ううん。今日のは違うよ」
 何が違うのかわからなくて首を捻る俺。絵本の話かなんかだろうか?
 生憎だが高校生になる俺に、絵本の話などちっとも理解がなかった。理系だから、と言うよりも本を読むのがそこまで好きじゃなかったから、さ。
 アスファルトに沿って並ぶ住宅も、冬になると気まぐれに降る雪も、俺にとってはいつもと同じだし違いなどわからない。

 しかし、姪はそんなことは気にせず。どこか不思議な様子で続けた。

「今日は何かが起こる日なのね」

 肩車越しでも、姪がどこか遠くを見るような声で言ったのはわかった。
 何がって……何が?
 見上げようとして、俺の頬に雪が落ちる。液体となったそれは涙のように頬を伝った。
 5歳児の話に真面目に受け止める俺も変かもしれない。
「そうなのかもな」
 適当に答えると、うん、と姪は頷く。

 それから事件が起こったのは、夜、雪が積もってからのことだった、

9/16/2023, 9:18:09 PM