【お題:部屋の片隅】
パラリ、パラリと、本が捲れる音がする。
ここは、記憶の図書館。この世界に生きる者達の物語を保管する場所……の一室。
自分は、その部屋の片隅で、一冊の本を捲っていた。タイトルは『エレメントノワール』。
大陸レークスロワには、幾つか『不死者の実験』が存在し。その中の一つを記録したものだ。
「あれ、アインくんがそれを読むなんて珍しいね?」
ふと、女性の声がしたので本から顔を上げると、ふわふわと浮き上がる一人の少女……というか精霊。
「司書さんか、まぁ、たまには原点に帰りたくなるものだよ」
「原点かぁ……エレメントノワールから、もう何年経ったかな?」
「さぁ、数えてすらいないよ」
エレメントノワールは、一番最初に行われた不死者の実験だ。元素と人を結びつけ、化学反応を見るイカれた実験だった。
もう、ずっと昔の話である。
「さて、読書はこれくらいにして、本棚の整理でもしようかな」
「おや、アインくんがやる気を出すなんて珍しい」
「僕だって仕事くらいするさ」
本を置き、立ち上がる。
ここは、記憶の図書館。レークスロワで起こったことを、随時記録し保管する場所。
本はいくらだって増えていく、自分はその整理に取り掛かった。
ーあとがきー
今回のお題は「部屋の片隅」でしたね。
前回引き継ぎレークスロワという、架空大陸のお話。
逆さの時と時間軸としては、10年後くらいを想定。とは言っても、繋がってはおりませんので別々にお読みいただけます。
語り部アインの名前の由来は、元素アインスタイニウムから。なんじゃそれはと思ったら調べてみてください、詳しい内容はあまり出てきません!
ついでに、司書さんと呼ばれた精霊は、図書館の管理者で、名をエルと申します。アインくんは、あんまり呼んでくれません。
やっぱり、魔法が出てこなかったなぁと思う今回。短編故にわからないことだらけだと思いますが、毎日お題に沿って、レークスロワの諸々を出せればなと思います。
それでは、またどこかで
エルルカ
12/7/2024, 11:23:23 AM