「ねえっ!どこいっちゃうの…?」
俺の服の裾をきゅっと掴んで、引っ張る君。
「…知らなくて良いよ」
これは本音。本当に、君は知らなくて良いんだ。
「なんで!ずっと、一緒にいるっていったじゃんっ…?」
不安で今にも溢れ落ちそうな君の目頭を、優しく撫でる。
「ごめんねえ」
俺がそう言うと、君は堪えていたしずくを、ぼろぼろとこぼして、俺の服を濡らした。
「なんなんだよ、約束しただろお」
嗚咽のせいで、呂律が回らなくなってきた君の手をとって、両手で包む。
「約束、忘れてないよ」
君の腰に手を回して優しく抱きしめると、君は俺の服を顔に近づけて、わんわん泣いた。
「絶対に戻ってくるから、ね?」
「…ほんとに?」
俯いていた顔を上げて、こちらを見る君。
その顔は、真っ赤に染まっていて、絶え間なく、しずくをこぼし続けていた。
「ほんとだよ」
裾を指で引っ張って、しずくを拾ってやると君は安堵したような顔をして、口角をくいっと上げた。
「…約束だからね」
「うん」
「やぶったら、ゆるさないんだからねっ!」
俺の服をぐいぐいと引っ張ったりして、ぴょんぴょんとジャンプをする君を見ていると、俺はなんでもできる気がしてくる。俺って、呪いかけられてるのかな?
「え〜、何されちゃうんだろう」
ニヤついて、冗談まじりにそういうと君は大きな目を細くして、顔を近づけた。
「…こうだよっ!」
俺の服を掴んでいた手を離して、俺の頬をぷにぷにとひっぱった。
「っふふ!」
満足げに頬を和らげる君は、赤ちゃんみたいで。
「もー、困っちゃうなあ」
本当に、困っちゃう。
3/22/2025, 1:17:31 PM