いぐあな

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愛を叫ぶ

 点滴の液が白いカーテン越しの陽の光を柔らかく映しながら落ちていく。
 酸素吸入の管を鼻に着けて、君はただ手を握ることしか出来ない私を見上げた。
「身体に気をつけて。ちゃんと、ご飯食べてね」
 私といられて幸せだったと言って笑う。君の瞼が閉じ、か細い呼吸の音が消えるまで、私はただ何も言えず、君を見詰めていた。

 夜の国道線。
『口下手なのは初めから知っていたから』
 態度でその眼でいつも告げて貰っていた……と、いつの日かの君が脳裏で笑む。
 空が淡く光始め、寄せて返す波が煌めく。
 でも、もう君は隣にいないから、それでは伝わらないだろう?
 君の命日に君と初めて出会った海を訪れる。
 彼岸の君に届くよう声を張り上げて愛を叫ぶ。

298字

5/11/2023, 10:48:44 PM