のねむ

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命が燃え尽きるまで、許しを乞う事は致しません。許して欲しいとも、思いません。
私は、許されないことを致しました。

私は男性の方が嫌いです。(勿論全員という訳ではありません。)
それは、生まれつきのものでは御座いませんけれど、けれど私の心の中に絡みつき一生離れない程のもので御座います。
理由は、本当に単純なもので御座います。私の大切な、大切なあの女人への性的な嫌がらせをしたから、という本当に単純で分かりやすいものなのですが、けれど私の心の中ではそれだけで嫌いになれるくらい大きく、難解なもので御座います。



「ただ、お尻を少し触られただけよ。」

そう女人は、仰っていましたけれど、私は許せませんでした。ただ。少し。だけ。その一言一言が私の心を蝕んでいきました。何故、そう仕方がないことだと笑えるのでしょうか。私がもし、触られたのならばまるで龍の逆鱗に触れたかのように暴れ回り、御相手方を皆殺しにしなければ気がすみませんもの。いえ、皆殺しというのは嘘ですけれど、それでもそれくらいの地獄を見せなければ許せないのです。
それは、勿論自分相手だけではなく私の大切な方がそのような目にあっても、同じように思います。
ですから、自分の事を卑下したかのように、仕方の無い事だと笑う女人の事を、有り得ないと心の中で少しだけ馬鹿に致しました。

お尻を触られた、その事実を隠してただ何時もの様に仕事をする姿を見て私は不思議に思いました。大きな声で言えば、宜しいのに、と。それから、もしかしたら恥ずかしくて言えないのではないか、と。
それならば、私が言って差し上げようとも、思いました。
今思えば私は頭が狂っていたのだと思います。いやらしい人間なのだと、今なら自分に言って差し上げれますが、その時は私は正義の心に満ち溢れておりましたから、そっと女人の為と思い声を上げ、性的な嫌がらせは辞めて差しあげなさい、だなんて、自分が偉い人だとでも思ったかのように、ただただ言い回ってしまいました。

私は愚かな人間なのです。もう一度言いますが、私はこの命が燃え尽きるまで許しを乞うことは致しませんし、許して欲しいとも思いません。ただ、私と同じ様な傲慢で愚かでいやらしい人間が生まれなければと思うだけに御座います。


女人は、私に「正義感と目立ちたがりを混合してはいけません」とそっと教えてくださいました。
私が言い回ってしまった故に、後ろ指を刺され同情の目で見られ、男性の方からはヒソヒソとうるさい蝿のような声で噂されるようになられました。
女人は、大層お美しく、鋭く何もかもを見透かしたようなお綺麗な瞳に真っ黒な長い髪の毛を纏う、まるで日本人形のようなお方でした。元々その美貌で周りの人から、注目を集めていたのですが、あれから更に注目を集めたようでその視線やうるさい蝿に我慢が出来ず、何時しか仕事をお辞めになられました。


これは、女人から聞いたことでは御座いません。しかし、あれから長い時間が経った今だからこそ、思うのです。
お美しい女人は、きっと全て慣れていたのだと思います。少しお尻を触られるのも、嫌がらせされるのも、それを指摘した結末も。美しさはきっと、何事も引き寄せるのです。それを容姿も性格も醜い私は知らずにおりました。恥じておりますが、それを謝ろうにも、もう既に女人本人には謝れる関係では無く、ただただ苦しむばかりなのです。
きっと、女人も私と同じように、暴れ回り皆殺しにしてしまいたいという思いはあったのだろうと、思いたいのです。
許されたいとはおもわないのです。ただ、私の無知を知って同情をして欲しいのです。女人に嫌われたくは無いのです。
嗚呼、このような時まで私は、自分のことばかりを考え、保身に走ってしまうのです。愚かで醜く、いやらしい。早く自分が死ねばいいと、恥じを感じるから思うのです。

再三にわたりお伝え致しますが、私はこの命が燃え尽きるまで、許しを乞う事は致しませんし、許して欲しいとも思いません。
しかし、無知で学がない私はそのような失敗がないと、知ることが出来ないのです。許して欲しいと思う訳がありません。ですが、どうか私をお嫌いにならないでください。私は可哀想な女なので御座います。






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この前、バイト先の綺麗な方がお尻を触られましたとおっしゃってました。少しヤンチャな男子中高生だったと思いますが。

咄嗟に「は?お尻を?!」と叫んでしまった私に、彼女はしっ!と止めたのですが、その時は何故止められたか分からず、そこから数日考えて、もしかしたら慣れていたのかも、とか、恥ずかしかったから、とか大事にしたくないから、とか沢山考えましたが、私は彼女とは違う人間なので完璧には分かりません。(私なら、大暴れします。相手に許しを与えると、調子に乗る可能性があるからです。何度も繰り返し、別の方が被害になんて、そんな可能性があるから。)

彼女はきっと、沢山悩み苦しんでいると思います。そう簡単に割り切れるものでもないと思います。他人の為に、そして自分の為に我慢するしか無かったのかと、思います。
私はそれを理解できず、大きな声で叫んでしまったのです。無知で、とても恥ずかしい。
そして、保身に走る様な自分がどこかにいる事が、許せないのです。そんな気持ちを少し織り込んで、書いてみました。
自分中心で自己満足な人間は、無意識で人を傷付けてしまうからこそ、自分の恥じさを知った時に誰かから許しを与えられては行けないと思うのです。

9/14/2023, 1:34:35 PM