寂しさ
(今日は凄い雨ですね...)
マスターが外を見るとザーと激しく雨音を立てながら、雨が降り続いている。
ここはとある洒落たBAR。
今日もマスターが作るカクテルを、求めて“お客様”が訪れる。
マスターが、いつものようにグラスを磨いていると...バン!、ガランガラン!、バタン!と激しい音を立てながら、本日の“お客様”が訪れました。
マスターは慌ててカウンターから出ると、タオルを持ってお客様の元に駆け寄りました。お客様は体が震えるほど濡れており、目元は赤く腫れていました。マスターは店の奥に設置してある風呂場に連れてゆき、お客様が入られている間に服やタオルを準備し、脱衣所に置いておきました。
マスターはまたカウンターに戻ると、ホットミルクを用意し始めました。ホットミルクが出来上がると、お客様は戻ってこられました。
マスターはお客様にホットミルクを渡しながら、今までの出来事を聞かせてもらいました。
「私は寂しいかったんです...。誰からも信用されない、求められていない...し...愛されていないんです...。」
とぽつりぽつりと言葉を並べるお客様。
マスターは静かにお客様の話に耳を済ませていました。お客様はそれっきり涙か溢れるだけで、何も話しませんでした。
しばらくすると、マスターは呟くように語りかけました。
「確かに貴方は誰からも、信用されないかもしれない、求められてもいないかもしれない、愛されいないかもしれない...。」と言うとお客様は悪魔でも見たような顔になった。何か言うようとした時、マスターは口を開いた。
「ですが、それは一部の人間からですよね?貴方はその一部しか見ていません。そのため、その一部に嫌われてもう無理となってしまったら、その先は何も見えなくなってしまいますよ。
もう少し視野を広げてみてはどうでしょうか、その一部の人間に好かれようと努力しても、無理なものは無理なんです。諦めた方が心がスッキリしますよ。視界を広げた先にはもっと良い人が、貴方を待っているかもしれません。なのでもう少し頑張ってみませんか?」とマスターは優しい言葉をかけていました。お客様は途中から泣いていました。
マスターとしばらく雑談してから、お客様はお帰りを要望しました。
マスターはお客様にまた辛くなったりしましたら、お越しください。私はいつまでも、ここにおりますので。マスターはお客様が見えなくなるまで頭をさげていました。お客様が変えられる頃には雨は止んでいました。
マスターは静かになった、室内で呟くように言いました
、
「本日は“お客様”がお越しに来ることがなかったんですが、あまりの寂しさを感じ取ってしまいましたので、こちらにお呼びました。
まぁ、貴方も呼んではいませんでしたが、何をしても貴方は此処に来るのでしょう?
いい加減“お帰り”になったらどうでしょうか。心配されますよ?
それとも...帰りたくない理由がございますか?」
とマスターは確実に自分の方を睨みながら、グラスに入ったカクテルを飲み干した。
12/19/2023, 11:13:14 PM