未知亜

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タイミングが良かったことなんかない気がする。

誰にでも懐く犬にさえ吠えられる、
SNS始めたら早々に乗っ取られる、
傘を忘れたら雨が降る(だから、母にとって絶対晴れて欲しい日には必ず傘を持たされた)、
残り一個の特売品は目の前で持ってかれる、
ほかにも……

「それは……難儀なことで」
君は古い言い回しで、ひょこりと顎を突き出した。
「だからさ、潔く仏滅にしたんだ」
「え?ㅤどゆこと?ㅤ今日仏滅なの?」
「うん」

「なんでまたわざわざ……」
「別に合わせた訳じゃないよ?ㅤたまたまだったんだけど。別の日にしなかったのは、タイミングとかじゃなくて、暦のせいに出来るかなあ、って……」
われながら馬鹿らしくなって、声がどんどん小さくなった。
黙っていた君がプッと吹き出す。
「そんな弱気な告白はじめて」
君の笑顔の眩しさ。

え?ㅤこれってさ、ひょっとして。期待してもいいやつ!?
「どうかなあ」
声に出したつもりはなかったのに、返事があって驚いた。
口に手を当てたまま何も言えないでいると、
「日曜日、デートしてよ」
信じ難い言葉が飛んでくる。
「私のために都合つけてくれたら、返事してあげる」
まって、まって、追いつかないから。タイミングなんか、全部ぶっ飛ばされてる!


『タイミング』

7/30/2025, 9:16:40 AM