REINA

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太陽



コミュニケーションが苦手な僕に取って、彼女の存在は異質だった。
最初はいきなり話しかけられて戸惑った。
なんて話を合わせたらいいかも分からなかった。

うまく話すことが出来ない僕に、何度も話しかけてきた。どうせ何かの罰ゲームとかなんだろうとも疑った。

彼女は大学の校内で僕を見つけるたびに、声をかけてきた。他愛のない話をして、僕は一歩的に話しかけられるだけだった。彼女は僕のそんな反応を見ても笑顔を絶やさなかった。

時が経って、少しずつ僕は彼女に対しての認識が変わってきた。
ゼミではよく隣になった。彼女の方から毎回隣の席に座ってきたけれど、僕の講義のノートを見て「字が綺麗だね」と言ってくれた。

また僕が学食で本を読んでいると、彼女が来て「その本面白い?」と聞いてくれた。
僕は短く「うん」と返事をした。
そうすると彼女は次の日、同じ本を買ってきていた。

僕が勧めてくれたから。
その理由だけで、僕の顔は熱くなった。

本当は話しかけられたことが嬉しかったのかもしれない。かなり強引に僕のテリトリーに入ってきたけれど、今はその違和感は無い。

ある日、大学のカフェテラスで、パソコン作業をしていた僕は、彼女が隣に来ていることを知らなかった。
10分くらい前からいたらしい。
集中しすぎて気付かなかった。

「私は君の作品が好きなんだ」
と言った。

趣味で執筆活動をしている僕は、創作小説のゼミで教授に認められて、作品を公開していたことを思い出した。

「すごく感動した。月並みな感想だけれども」
彼女の瞳が真っ直ぐに僕を射抜く。

「私にとって、君のその文才は太陽みたいに、温かくてホッとする感じなんだ」と。

こんなちっぽけな僕が、誰かの心に何かを残せたことに、思わず涙がこぼれそうになった。

その一言で、僕にとっても君は太陽なのかもしれない。

8/6/2024, 1:15:30 PM