前回投稿分で放ったらかした、「前回投稿分の物語の裏側」を、今回のお題に絡めてご紹介。
最近最近のおはなしです。完全にフィクションファンタジーで、現実要素2割程度のおはなしです。
都内某所、某稲荷神社から早朝に、雪国出身の藤森と、稲荷神社に住まう稲荷子狐とが、
レンタカーでもって、不思議な不思議な大イチョウを目指して、静かに出発しました。
藤森の目的は、大イチョウの下にあるという、異世界と繋がっている黒穴の封印を解くこと。
その黒穴は藤森の、故郷の雪国にありました。
『この世界と別の世界が繋がれば、先進世界の技術でもって、すぐに気候問題を解決できる』
藤森にヒソヒソ、異世界組織の職員が言いました。
組織は名前を、世界多様性機構といいました。
『お前が大好きな、絶滅してしまった花も、絶滅しそうな花も、救うことができる。
黒穴の封印を解け。この世界と異世界を繋げ』
何か裏は存在する。 藤森、考えてはいましたが、
事実として日本の自然環境は日々悪化の一途。
気温は上がり、水田は干上がり、一部の山はソーラーパネルの過剰な敷設で保水能力を欠き、
そして、一刻の猶予も、許されないのです。
黒穴の封印を解くには稲荷狐の協力が不可欠。
藤森は稲荷神社の狐にすべてを話し、すべてを共有し、そして、子狐を借り受けたのでした。
「何が起こっても得られなくても、すべての結果を受け入れる」と、子狐のお母さんに約束して――
――ここまでが前回投稿分。
そろそろお題回収に行きましょう。
藤森が稲荷子狐と一緒にドライブに出て1時間、
その藤森の動向を注視していた組織が、慌ただしく動き始めました。 藤森が都内に居ないのです!
「藤森の行き先は」
「まだ掴めていません。
高速道路を見張りましたが、引っかかりません」
組織の名前は「世界線管理局」。
世界の独自性を守り、別世界からの違法渡航や技術侵略を取り締まる、公的機関のようなもの。
藤森が封印を解こうとしている「黒穴」は間違いなく日本に昔から存在する現象ですが、
「それ」を、「今の時代」に、「先進世界から技術先進技術を導入するため」に解放するのは、
ひどく、非常に、実に危険なことだったのでした。
「稲荷神社の狐から返事は」
「『末っ子を連れて早朝にドライブに行きました』としか、情報は貰えてないよ。完全にダンマリ。
アンゴラの魔法と占いで何か分からないの?」
「それができてたら苦労しないわ」
「くそッ」
ダン!
管理局法務部の、即応部門はてんてこ舞い。
部門長がこぶしで壁を叩き、色々後悔したり、情報整理したり、部下に指示を出したり。
別世界の技術を東京に持ち込もうとしている組織があるのも、その組織が藤森をそそのかしているのも、部長さん、双方知っていました。
だからこそ、数ヶ月前から藤森を見ていました。
藤森の後輩が人質として使われないように、先手を打って保護もしたし、
藤森がそそのかされないように、藤森と対話もしてきた、つもりでした。
「まるで虹のはじまりを探しているみたいだ」
部長の部下、ツバメが言いました。
「藤森は確実にどこかに行った。ハッキリ見えているのに、その『正確な』『どこか』が分からない。
目的も分かる。行きそうな場所も把握してる。
なのに、その場所に向かっても、それが無い。
どうすれば良いんだ。虹のはじまりは、どこだ」
できるだけ早く藤森を探し出して、藤森の計画を、阻止しなければなりません。
相手の目的と自陣の目標の、両端がハッキリ見えているのに、追いかけても辿り着けないのは、
まさしく、虹のはじまりを探しているのと、似ているようでもありました。
「早く、探し出さないと」
全部が手遅れになる前に。
東京はじめ、独自性を保ってきたこの世界が、
別世界の技術で塗りつぶされてしまう前に。
「どうすれば、どうしたら……」
こうなったら、稲荷子狐の親を捕まえて、徹底的に尋問するしか、もう手がかりが。
即応部門の部門長が、手荒な真似を考え始めた、
まさに、そのときでした。
「こんにちはっ!!」
バン!
即応部門のオフィスのドアを、勢いよく開けて、声を張って入ってくる女性が、おりました。
「あ、あのッ!情報!いりませんか!!」
震える声で、しかし力強い意志でもって叫ぶ女性。
なんということでしょう、彼女はまさかの、藤森をそそのかしていた組織の構成員だったのです!
「私、藤森さんの情報、持ってます。
あの世界を救ってください、あの世界の、古き善き技術を、先進世界の侵略から、守ってください!」
ずいぶん丁度良く出てきますね。
まぁフィクションファンタジーだから仕方ない。
「言え」
震える女性の両肩に手を置いて、部門長さん、真剣な顔して言いました。
「あいつは、どこに向かった」
「あのひとは、藤森さんは……」
今日のお題のおはなしはここまで。
あとは今後のお題の配信次第。
しゃーない、しゃーない。
7/29/2025, 6:59:40 AM