田中ボルケーノ

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つまらないことでもあったんでしょう?

多分、私なんだろう
目線は真っ直ぐこちらに向いている
が、私じゃない可能性もある
一旦後ろを確認する
やっぱり私に向けた言葉の様だ、後ろには誰もいない

はっきり聞こえた私への問いかけ
でも一旦聞き返してみる
何かの間違いかもしれない

えっと、、え?つまらないこと、ですか?

辿々しく聞き返した言葉が終わる前に男は再び口を開けた

ああ、やっぱり!
だと思った、そんな浮かない顔してるから
その話詳しく聞かせてもらいましょうか

ちょっと待って欲しい、まるで私の言葉が届いていない
男は続ける

飲みにいきますか、近くに行き着けのバーがあるんですよ
あ、申し遅れました
ワタクシ、つまらないこと探偵団で営業してます三平と申します
こう見えても職業柄ですかね、つまらない匂いには敏感なんですよハッハッハ
ゲッチュー、なんちゃって

困ったことになった
意味が全然わからない
なんかめちゃくちゃ笑ってる
仕事で疲れた帰り道
街角で偶々目があったヤツにグイグイこられるほど怖いことはない

ちょっと急いでるので、

私は逃げることにした
声のトーンを下げ顔は見ずにその男の横を強引に渡る

通り様にその男が呟いた


あの時の言葉を今でもたまに思い出す

その男とはその一度きりで
それから何もないんだけど
なんでだろう?なぜだかたまに思い出す

「またつまらない日々から逃げるのね」



        『つまらないことでも』

8/4/2024, 1:35:55 PM