かたいなか

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ゴールデンウィークなど、刹那です。
始まったと思ったら、休みはもう終わるのです。
と、長期休暇への嫉妬だの羨望だのを、コロコロ転がす物書きです。
今回のお題は「刹那」とのこと。それっぽいおはなしをひとつ、ご紹介します。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
ここの法務部執行課、実動班特殊即応部門は、
ちょうど、ひとつの事案を抱えて、そこそこ忙しくしておったところ。

管理局に、「管理局をドチャクソに敵視している組織」が勝手に潜り込んできたのです。
勝手に潜り込んできた組織は、名前を、世界多様性機構といいます。
機構の連中は管理局の局員を誘拐して、
管理局全体を、揺さぶろうとしたのです。

ところで
その日に限って法務部は
早朝からの緊急出動がひっきりなしでして。

「舌にのせてるハズのアーモンドの感覚が遠い……」

頭を抱えたりデスクに突っ伏したり、
今朝からの副部長は、アレアレコレコレ立て込んで、随分忙しいなと思っていたところ。
決裁箱の隣に急きょ設置したらしいナッツの小皿から数粒つまんで口に放った彼が、
小さな声で、呟きました。
あんまりアレコレ有り過ぎて、自分で何を食っておるか、自覚できていないのです。

それでも法務部執行課としての仕事は既に半分が終了して片付けられて、
あとは折り返し、残りの半分だけのようでした。

刹那、カクン、副部長の小首が傾きます。
早朝からのミーティングとミッションで、疲労しておるのです。
刹那のカクンは疲労なのです。
決して、SAN値の減少ではないのです。

「おい。無事か」
副部長がどこか別の世界の、別の誰かと誤接続して、ケタケタ急性バグなどしておったので、
たまらず部長、声をかけたのでした。

「……ブジ、『附子(ブシ)』?………何故私は部長からその話題を振られているのです?」
「『大丈夫か』と聞いたんだ。『附子(トリカブト)』の話なんてしてない」
「あぁ、そうです、していない、何の話でしたっけ?異郷訪問説話ですか?英雄の黄泉路探訪譚ですか?」

「しっかりしろ。『そこ』から戻ってこい」
「戻ってこい、モドッテコイ、……あぁ、黄泉路の方ですね、……もう少し時間をください、これを片付けてから、ゆっくり………」
「逆に奥に行ってどうする」

「わぁ。ツバメが正気度喪失しまくってる」
その日の5回目の尋問作業から戻ってきた査問官には格好の見世物だったらしく、
イタズラ相手を見つけた査問官、ダイスロールがどうだの1D10かしらだの、楽しそうです。
ねーねー、見えてるー?
ツバメ副部長くん、君の「ナカ」に誤接続して居るのは、どこの世界の誰かなァ?
と、目の前で手なんか振っています。

刹那、カクン、副部長の小首が傾きます。
疲労ギリギリでも、査問官の声は聞こえるのです。
刹那のカクンは疲労なのです。
断じて、SAN値の減少ではないのです。

「すっごい。レアだ。カラスがこんなに疲れてる」
「その疲れてるやつの前で、そんなにはしゃぐな。そっとしてやれ」
「そっとできるわけないでしょ。わー、わぁー」
「……。」

きゃいのきゃいの、
騒ぐ査問官は楽しそうですが、
逆に、副部長は虚ろ目ながら至極迷惑そう。
鍵付きの引き出しの、鍵をあけてそれをずらし、
アンゴラウサギとドクロマークの鍵付き小箱を取り出してぶつぶつと、

……、「アンゴラウサギとドクロマーク」?

刹那、カタン、副部長が部長の方を見つめます。
虚ろな目が、それでも部長に、
「ゆるしてください」と要請しています。
刹那のカタンは最終警告なのです。
断じてSAN値直葬で脱落したのでは、ないのです。

刹那の副部長が、薄く笑います。
笑顔は明らかに、間違いなく、乾いているのです。

4/29/2026, 6:46:41 AM