「不良品になった子どもはかわいいか」
きのう両親に言ったこと。
「お前の足、粉々に砕かれたくなかったらさっさと失せろ」
これは弟にだ。
「誰かわからない、はやく帰ってくれ」
担任教師、友だちだと名乗る数人の男女、あとは親戚だとか自分の人生に関わっているという人たちにはそう言った。
「すきにしてくれ、全部任せる」
最後に、私を担当すると言っていた弁護士。
好き放題黒いものを吐き散らかしても、まだ内側がもやもやする。
──冷たく無機質なコンクリートの巨大な箱。
何人もの自由の効かない人たちが収容されている。
自分もそのうちのひとりだ。
入浴、排泄、食事にいたるまで自由は許されなかった。
受け入れられない気持ちがどれほど強くても、現状を拒否する自由さえないのだ。
おかしくなりそうだった。
親も弟も何もかもを遠ざけ、自分と彼らは全くの他人だと思い込むのが一番マシだ。
ここへは誰も来なくていい。胸を掻きむしって取り出したいほどの苦悩に耐えるくらいなら、孤独のほうがずっといい。
だけど、そんな思いとは裏腹に、明るい声がした。
「あなたが赤ちゃんだった頃を思い出して、私は可愛く思うわ」
母だ。
母の声。
ちょっと前までこの声がだいすきだった。
今ではこんなにも憎い。
憎いと思う自分もひどく……。
「おしめだって私が替えてあげるのに」
母はベッドに転がるだけの私に言った。
「まあそれは退院したらね、お母さんに任せてね」
8/24/2024, 12:30:18 PM