Thema「イブの夜」
「そういえばお前、結局誘ったの?」
「いいや、勇気出なくってさ。本当に臆病だよな。俺って」
俺には好きな人がいる。
ずっと前から好きだった。
一緒に過ごしているうちに、どんどん魅力にひかれていった。
「クリぼっち、やだなぁ」
「そう思うんだったら、さっさと誘ってこいよ」
1か月前、俺は『好きな人』に「一緒にクリスマス出かけない?」そう言おうと決心した。
ようするにクリスマスデート。
でも結局勇気が出なくて、何も言えなかった。
「もう時間ないぞ」
24日。俺は昔からの親友と2人でクリスマスパーティーをしていた。というか、ただのお話会みたいな感じ。
「ここで言わなかったら後悔するのは分かってる。でもビビって身体が動かないんだよ」
クリスマスデートに誘うというのは、成功すれば最高に嬉しい。けれど断られたら、もう立ち直れないんじゃないかってくらい落ち込む。
だから怖いんだよなぁ。
「知っるか?」
「ん?」
「今、告白をしようかしないか悩んでるとするじゃん」
親友の顔を見ると、それは真剣な表情だった。
「告白して断られて「告白しなければよかったぁ」って後悔するよりも、告白しないで「あの時告白しとけばよかったな」って後悔する方が、よっぽど辛いんだよ」
「……」
「テストやったり時とかさ、早く結果知りたくね?どうなったかなって、ずっとムズムズするじゃん」
「確かに」
「まぁ要するに、挑戦しないで後悔するより、挑戦して砕けて後悔した方がましってことだ」
その言葉で気づいた。確かに今、何もしなかったら今後ずっと後悔する気がする。でもここで勇気を出せば、結果が悪くともスッキリする気がする。
「何もしないでお前自身の青春を終わらせていいのか? 挑戦するのは大事だと俺は思う」
俺は顔に出ていたのかもしれない。
「その顔は覚悟を決めた顔だな」
ありがとう。親友。
「確かあいつ、そろそろ塾終わる時間だったよな? ちょっと行ってくるわ」
「おう、行ってこい」
そして俺は走り出した。
「頑張れよ。お前がリア充になるのを楽しみにしてるぜ」
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「はぁ、はぁ……」
全力ダッシュしたせいで息切れがひどいな。
時計を見ると、針が10時を示していた。
「そろそろ塾終わる時間だよな」
『好きな人』とは結構話したりしてて、塾の帰りに会うと一緒に帰ったりしていた。だからきっと大丈夫なはず。
「あっ……」
すると塾から出てきた。『好きな人』が。
「え!? どうしてここにいるの?」
驚いた表情をしている。まぁ、当たり前だよな。
「あっ、いやそのな……」
目の前に相手がいるのに、少し言葉が詰まる。
「えーと……」
すると後ろから親友の声が聞こえた気がした。
「頑張れ」
後ろを振り向くと、遠くから静かに親友が見守ってくれていた。
ポケットに手を入れて、寒そうにしている。
その姿を見て、俺は決心した。
ありがとうな親友、今まで俺の恋を応援してくれて。待ってろ。今、言うから。
「あのさ、明日クリスマスじゃん」
「そう、だね」
スゥーっと深呼吸し、君の目をしっかり見て言う。
「明日、一緒に出かけない?」
いや違うな。
もういい。ここまで来たら言っちゃえ、俺!!
「俺とクリスマスデートしてください!!」
頼む頼む!!
こんなに心から願ったことは無い。
君と一緒にいたい。
照れているからなのか、寒いからなのかは分からないけど、君の顔は少し赤くなっていた。
そして君は笑顔で答えてくれた。
「いいよ!!」
視点B
あっ、たぶん今言ったな。
遠くからでも分かる。あの必死の表情。
俺はずっと応援してたよ。お前の青春を。
ほんっとうに。ずっと好きって言っててさ、早く結ばれろよ。とか思ってたりしたよ。
でもそれがいざ、くるって思うと、関係ない俺でさえドキドキする。
「……あれは、」
心から嬉しかった。
あいつも、あいつが好きな人も。
満面の笑みだったんだ。
あぁ、良かったな。本当に良かったな。
「また今度、デートの感想をたっぷり聞かせてもらうとするか」
そうして俺は、心の中で「おめでとう」と思いながら歩き始めた。
12/24/2023, 12:39:36 PM