「タイムマシーンに乗ってみたい?」
友達に言われた。
「やだ。だってこれからまた1から勉強でしょ?絶対やだよ」
私は目の前の机に置かれたテキストを見ながら苦い表情で答える。
「でも、やり残したこととか、あの時こーすればよかったとかないの?」
友達に聞かれる。
「一つだけ、あるよ。小さい頃、好きだった男の子が引っ越して行っちゃったことがあったんだ。私、あの時、好きっていいたかったな」
私の言葉に友達はくすっと笑う。
「可愛い思い出だね」
「そうだよ!どーせそれくらいしかないですよ。とにかく!勉強しに過去に戻るなんて真っ平だから!」
「あはは、真菜は勉強苦手だもんね、今日も補習頑張ってね」
「うう、やだよー」
と言う私を残し、友達は席を離れていく。
私は授業の始まるまでの束の間、ふと青空を見た。
引越しする時のあの子の顔を思い出す。
ぐちゃぐちゃに泣きはらした顔で、無言で手を振る事しかできなかった。
あの子は今どうしているのかな。
あの時好きだった気持ちは、濃かった気持ちは沢山薄められてほのかに心に色づいているけど
まだ忘れてないよ
タイムマシンで告白していたら、今の気持ちは更新されるのかな、それもまた不思議だな
そんなことを考えていた私は、いつの間にやら始まっていた授業であてられ、こっぴどく叱られたのだった。
1/23/2024, 7:32:51 AM