10年後の私から届いた手紙
A子とB子とC子は、高校を卒業して以来、10年間続く関係だ。高校卒業10周年を記念して今日はA子の家で宅飲み。
「変わらぬ友情に乾杯ー。」
「乾杯」
「乾杯」
「卒業式の時さ、10年経っても一緒だよ。って誓いあったの覚えてる?」
「覚えてるよ。誰もいない教室で私たち3人だけ集まってA子が号泣するから、私とC子も貰い泣きしちゃって。」
「懐かしい。そんなこともあったね。」
「やだぁ、恥ずかしい。それは忘れてよ。あれから10年経って、B子は子供ができて、C子も新婚かぁ。私だけ独身だぁ。」
「A子はCAじゃない。私とC子の誇りだよ。」
「それに結婚なんていいことばかりじゃないしね。B子も私も色々苦労してるんだから。」
「ねぇ、その苦労教えてよ。今から手紙書くの。卒業式の日の私たちに向けて。高校を卒業してからどんな経験をして、どんな成長をしたかを振り返ってさ。もちろん最後には発表して貰います。」
「A子はそう言うの好きだよねぇ、私は構わないけど、C子は?」
「私も別に構わないけどさ、大した人生じゃないから書くこと困るのよね。」
A4用紙を何枚か持ってきて、それぞれ手紙を書き出した。
できた手紙は一つにまとめられて、食事の片付けが終わった後、発表会が開かれることになった。
「では、言い出しっぺの私から読み上げたいと思います。
えー、A子ちゃんへ、あなたは高校生の頃、泣き虫だと冷やかされていましたね。残念ながら10年経っても変わりません。覚悟しておいて下さい。A子ちゃんの夢はキャビンアテンダントになることでしたね。その夢は絶え間ぬ努力の結果実現することになります。実現までには何度も泣くことになると思いますが頑張って下さい。私は今だに独身ですが、仕事にプライドを持って充実した日々を過ごしています。
10年後のA子より。」
読み終えたA子に拍手が送られた。
「A子の後だとやりづらいなぁ。私のは本当に内容薄いからね。」
と、手紙を読み出そうと思ったB子だが、手紙を目にすると戸惑いの表情を浮かべた。
「あれ?これ私の手紙じゃないよ。C子のじゃないの?」
「私のでもないよ。」
「とりあえず読んでみてよ。」
「分かった。読むね。B子ちゃんへ、あなたは大学で大企業の御曹司Xさんと付き合うことになります。」
「え?B子は高校の時から付き合ってたY君と結婚するんじゃない。」
「ちゃちゃ入れないの。B子も続けて。」
「Xさんは、お金持ちなのに謙虚で優しくて満ち足りた日々を送ります。しかしそんなXさんに病魔が忍び寄るのです。
Xさんを失った悲しみで失意にくれる私、しかし、そんな時励ましてくれたのがアラブの王族のZ。Zには3人の妻がいましたが、私への愛の証のため前妻とは全て別れてからプロポーズしてきました。私の生活は一変しました。Zからは一生かかっても使い切れないお金を与えられました。しかし、私はそんな生活に満足しなかったのです。ジュエリーデザイナーとしてデビューするとその活躍が話題になり、日本のテレビ番組に出演、歯に衣着せぬ物言いから時代の寵児になります。それが10年後のB子。
PSあなたが私に書いた手紙があまりにも退屈だったので内容を変更させて頂きました。
え?何これ?どう言うこと?」
「ちょっとB子何その手紙?」
「だから私が書いた手紙じゃないんだって、ひょっとして、私たちが書いた手紙が10年前の私達に届いて、その手紙を見た10年前の私達が返信を寄越してきたんじゃないかな?」
「変なこと言わないでよ。B子ってそんなキャラだっけ?」
「うるさいわね、あなたの手紙も読んでみせなさいよ。」
「はいはい。じゃあ私の番ね。えーと、手紙の内容を変更させて頂きます?何これ?私が書いた手紙じゃない。」
「えー?C子もなの?」
「だから言ったじゃない。続きはなんて書いてあるの?」
「大学に入学するとY君から告白されます。私のことをずっと好きだったと、だけどY君はB子の彼氏。私は愛か友情かを秤にかけて友情を選びました。しかしそんな私をB子は諭します。私、ずっとY君の気持ちには気付いていたの。だけど私は友情よりも愛を取った。C子はずるいや。自分ばっかり良い子ちゃんになって。これからはY君と幸せに生きて、そして私達の友情は永遠だよ。」
「ちょっとあんた?私の旦那を狙ってたの?」
「そうよ。Y君はね。私と結婚していた方が幸せな人生を送れたんだから。」
「あっ、私の手紙の内容も変わっている。A子へ、28歳にもなって結婚していないなんてガッカリです。私はパイロットと結婚したくてCAになりたかったんです。仕事へのプライドとか言って言い訳はやめて下さい。今すぐ安っぽいプライドなんか捨てて結婚すること。この際パイロットじゃなくてもいいです。何これ?10年前の私ってこんなに性格悪かったの?」
2/16/2024, 12:07:03 AM