憂一

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『たとえ間違いだったとしても』

「俺は自分で幸せになるよ。」

この街を治める私を救ってくれた1人の勇者は、その言葉を残して私の元を去りました。
勇者にはあまり似つかわしくない台詞かもしれません。
勇者は人を幸せにするために戦うものだと思われる方が多いと思います。
事実、あの方も、この街を襲った魔物と戦い、人々を救い幸せをもたらしました。
そして、それが人類と魔物との最後の戦いでした。
あの方は、それから先の道に迷っていました。あの方にとってはこの街を守ること、この街の人々を救うことがすべてでした。その役目を果たし終え、己の道を見失っていたのでした。
私はどうにかこの方を支えたいと思い、やがてそれは愛へと変わっていました。
あの方と過ごす時は、私にとって幸せだったと思います。
ですが、あの方にとってはいつからか違ったのかもしれません。
だから、あの方は私の元を去ったのです。

「俺に幸せを与えてくれてありがとう。だけど、俺は自分で幸せになるよ。」

私の愛は、同情から生まれた間違ったものだったのかもしれません。それでも、あの方をお慕い申していたこと、それは正しかったのだと覚えておきたいのです。

4/22/2024, 12:51:38 PM