一夜の夢

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穏やかな春風が、伸びすぎた前髪を揺らしていった。
春のにおいがする。

何度となくこの窓から眺めた街を、今日僕は離れる。
振り返れば、なかなか幸せな日々だったと言えるんじゃないだろうか。
開け放した窓の外からは、よく晴れた青空が見えた。

愛しき今日にさよならを。
明日になれば、もう戻らないこの街を懐かしく思うだろう。
人々の声で賑やかな通りも、風に翻る鮮やかな洗濯物も、夕暮れに灯る暖かな明かりも、ぜんぶお別れだ。

新しい街は海の近くにある。
春のにおいに潮の香りが混ざるのを想像して、僕は目を閉じた。

2/18/2024, 1:54:01 PM