「やっと来たか!遅かったな」
奇怪な風貌のキャラクターが俺に話しかける。
「お前…街に行こうって、ゲームかよ」
負けず劣らず自分も性別不明な見掛けのアバターで答える。
学校が終わって帰り際に突然「今日の夜に街に行こう!21時に集合な!お風呂もちゃんと済ませて来いよ」と言われたから何かと思えばこれである。
「だってよーこんな田舎でそんな夜遅くに出掛けたら怒られるべ?」
「だったら最初からゲームしよって誘えよ」
紛らわしい。
目の前の奇怪なアバターがポリポリと頭を掻く。
「それだと面白みないやん」
「紛らわし過ぎるんだよ」
「まぁまぁそんなことより俺と一緒に冒険しようぜー」
「冒険ってお前…」
このゲームは自分の分身で普通に生活するほのぼの育成ゲームである。
冒険要素なんてない。
「何すんだよ」
「浜辺でも走りに行く?」
「何のために?」
「せいしゅん?」
「ゲームのなかで?」
「そう」
「そういうのってリアルでやるからいいんじゃないの?」
「冬に海は寒いやん?」
「いやいやいや」
「まぁ何でもいいんだけどさ。単にお前と遊びたかっただけだから意味とか求めんなよ」
「じゃあ、今から何すんの?」
「何しよっか?」
画面越しに脳天気に笑うアイツの顔が見える気がする。
「普通に学校で喋ってる時と何ら変わんないやん」
目の前に居ない相手に笑いかけてしまう。
「それもまた醍醐味よ」
「何の自信だよ」
相変わらず意味が分からない。
「まぁ…な!でも今度リアルでも遊びに行こうな!」
「本当の街にな!」
皮肉を込めて答える。
俺のアバターが満面の笑みで会釈した。
(街へ)
1/29/2026, 9:36:13 AM