かたいなか

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前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某杉林に隠された奥深くに、
「世界多様性機構」なる異世界発の厨二ファンタジー組織が建てた、通称「領事館」がありまして、
そこはつまり、東京に避難してきた異世界からの難民を、生活基盤としても、メンタルの相談としても、支援するために作られた館でした。

領事館に勤める者は、当然東京出身でもなく、この世界出身でもなく、
今のところ、1台の空気清浄機搭載型移動掃除機(魔改造済み)を除いては、全員が異世界人。
異世界の技術を使って、
異世界から避難してきた者の悩みを受け止め、
故郷の世界が滅んでしまった者の生活を支援して、
そして、 そして、 領事館は領事館自身がドチャクソに敵視しておる管理局ほどの資金源がありませんので、いつも資金がカッツカツなのでした。

お題のように、領事館の支援対象が「二人だけ」なら良かったのですが、そうはいかないのです。
■■倍なのです――「二人だけの。」

で、そんな世界多様性機構の領事館には、もちろん異世界発の組織なので、
異世界の魔法道具やら、チートアイテムやら、地球上のどの科学技術より進歩した機械技術やらが、
複数個、だいたい20個から30個くらい、保管され、使用もされておりまして。

特に領事館の親元、世界多様性機構の本部には、
地球の気候変動だの、地球温暖化だの、そんな「ちっぽけな」問題を1ヶ月くらいで全部解決できる大型機械が、保管されておるのでした。

異世界渡航技術の確立していない日本で、地球で、この世界で、環境問題解決マシンを許可無く、勝手に使うことはできません。
別世界の人間が、他世界の問題に介入して、その問題を解決することは、原則として違法なのです。
それは違法なことなのです。それは、この世界にとって、長期的には良くないことなのです。
この世界の問題は、この世界のチカラで、解決法を見つけ出して、実行すべきなのです……

が、
ある日、都内在住の雪国出身者が
ひょんなことからその「異世界にこの世界の環境問題を解決する技術があるんだぜ」を
運良く、あるいは運悪く、知ってしまいまして。
その雪国出身者は名前を藤森といいました。

「別世界の人間が、この世界の問題に介入することが違法なのでしょう」
風吹き花咲く雪国から来た上京してきた藤森。
昨今の気候変動で少しずつ、しかし確実に数を減らしている日本の花々を、酷く悲しんでおりました。
「私はこの世界の出身で、この世界の人間だ。
私が異世界の機械を使って、この世界の問題を解決するのは、あなたがたの法律で完全合法とはいかずとも、完全違法でも、ないのでは」

この世界の人間に任せていては、日本の花が消えてしまう。日本の四季も、冬の雪も消えてしまう。
藤森は世界多様性機構の領事館の、一番偉い「館長」に、直接、直談判するのでした。
「私は、どんな手段を使ってでも、日本の花を、故郷の雪を守りたい。チカラを貸してください」

なにより気候変動が一気に解決すれば東京の夏は確実に涼しくなるのです。
だってまず体温超え、微熱超えの酷暑が消えます。
これは早急に、緊急に、なんとかすべきなのです。

「アンタの言いたいことは分かった」
領事館の館長さん、藤森の話を聞いて言いました。
「たしかに、俺達『異世界人が』、『異世界の技術を使って』、この世界に介入するのは違法だし、
アンタが言ったように、『現地人が』、『異世界の技術を使って』、この世界に介入するのは、一部に限って法律の穴になってる」

ポン、ぽん。
館長と藤森、二人だけの館内で、館長が藤森の肩を叩き、視線を合わせて、そして、言いました。
「時が来たら、俺達世界多様性機構は、アンタを機構の臨時・現地職員として歓迎しよう。

それまでこのことは秘密だ。二人だけの。
俺と、アンタだけの」

いいな。時が来るまで、待つんだ。
館長が言いました。
日本の花を愛する雪国の藤森は、静かに目を細め、
そして、深く、頷いたのでした。

「二人だけの。」をお題にした、ちょっと真剣でガッツリふぁんたじー、そしてドチャクソ厨二ちっくなおはなしでした。
この先藤森と領事館がどうなるかは、今後配信されるお題次第。 しゃーない、しゃーない。

7/16/2025, 6:01:04 AM