今日も今日とて、人の情の不条理さを嘆いている。
他人の心無い言葉なら、閉じこもってさえいればやり過ごせる。
私は今、虚弱に甘んじている自分の心を憎んでいる。
冷徹は強さだなんて言う人がいるけれどそれは真っ赤な嘘だ。自分の純情を優しく抱いて、それを原動力に重い体を持ち上げる、それこそが真人間の姿だと思う。それすらできないのがこの、不潔、ひいては卑屈を極めた私なのだ。
自分を信じてくれる人さえ疑いにかかり、大衆を巻き込んでまで彼女を試そうとする。
先述の、真人間であることを証明するがために。
人一倍の執着を持つ分、それにそぐわない自分が恨めしい。いや、果たしてそうか。そんな偏屈を通り越して私は、自己の不甲斐なさを他人や、ましてやあの子のせいにしてしまってはないだろうか。
いっその事、自分を人でなしだと認めて畜生道に身を落とせばいいのだろう。
それでもなお純愛にこだわり続けるのは何故だろう。信条は既に、強迫観念にすげ変わっているのかもしれない。
今も鼻腔には甘い匂いが染み付いている。気道を丸ごと焼き潰すような甘い匂い、彼女じゃない、そこらの木偶人形から絞り出した濃い蜜の匂い。
彼女のことを思い出そうとする足掻くほど、酒池と肉林が視界を覆っていく。
今感じているのは虚しさを孕んだ高揚感と、自分が虫になりつつあることへの、ただ冷たい恐怖心、それのみである。
4/23/2023, 1:50:01 PM