徒花

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「枯葉」

「ねえ、知ってる?冬になると葉っぱが落ちるのは木が生きていく為なんだって」

冬の初め頃、学校からの帰り道、友達のユズが突然そんな事を話し始めた。

「生きていくために葉を落とすってどうゆう事?」

突然の話題転換に驚きつつ、ユズが話す話に少し興味が湧いたので私は疑問に思った事を聞いてみる事にした。

「それがね、葉を付けていると葉にも栄養分を供給しなきゃいけないんだけど冬は葉に送るだけの栄養が足りないんだって、葉に栄養を送ると木に栄養が無くなるの。」

そこまで話すとユズは一泊間を置いて

「だから木が生きていくために葉を落とすの」

とどこか力強い声でそう言いきった。

他人事ながら悲しいと思った。
木が生きていくために落とされる葉。
それはまるで仲間を見捨てるみたいだと思った。
共に成長してきたのに、同じ場所で育ってきたのに捨てられる。
過去の自分と重なってなんだか嫌な気分になった。

「木は酷いね、自分が生きていくために葉を落とすなんて、仲間を見捨てるみたい」

思わず思ったことが口をついて出る。

ユズは私の言葉に驚いたのか歩みを止めた。
そしてそんなユズに慌てて振り返ると、ユズはどこか神妙な面持ちで私を見ていた。

「そう思う?」

そしてどこか悲しげで寂しげな表情を顔に滲ませながら私へ問いかける。

あれ、私何か変なことを言っただろうか、ユズがなぜそんな顔をするのか私には分からなかった。
生きていくために葉を落とす木、突然落とされる葉。
木は生きていくため葉を見捨てている。
それを酷いと言わずなんと言うのだろう。
ユズはそうではないと思っているのだろうか。
いつもはあまり見せない表情に困惑する。

「葉はね、冬を越せばまた木につくことができるけど木は葉のように直ぐに成長することは出来ないんだよ。」

「うん…?」

ユズの言いたいことが分からない。

「そして葉は木がないと生きていけられない」

「うん、そうだね…?」

「木は葉を見捨てたわけじゃないと思うよ。
また葉と出会うために一時別れるだけだよ。」

ユズが言いたいことがやっとわかった気がする。
葉が生きていくためには木が必要で、その木が生きていくためには冬を越す必要がある。
でも葉をつけていたら冬を越せない。
冬を越せなければ葉をつけることも出来ない。
だから見捨てるわけじゃない、木が歯を落とすのは生きていく為だけじゃなく葉をつけるためでもあったんだ。

自分はてっきり生きていくためだけに葉を落とすと思っていた。
でもちゃんと理由があったんだ。
知らないだけで知ろうとしなかっただけで意味があったんだ。
そう思うと過去と少しだけ向き合える気がした。

「ありがとう、ユズ!」

この話しをしてくれたユズにお礼が言いたかった。
私はユズの方を向いてお礼を言うと葉をつけていない木を向くと、また視線をユズに戻す。

「…?うん、どういたしまして!」

ユズは私が突然お礼を言ったことを驚きつつ気持ちを受け取ってくれた。
地面に落ちた枯葉に
「また会えるからね」と言うとまた歩き出した。

2/19/2023, 11:49:07 AM