雷鳥໒꒱·̩͙. ゚

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―ブランコ―

とある夜の公園にて
「お待たせ」
『やっと逢えた』
待ち合わせをしていた彼との再会を果たした
『それにしても、よく戻ってこれたね』
「ちょっと余裕ができたからね
様子見に来たんだよ」
灰がかった青い空に月や星など出ていなくて、
公園の地面を照らすのは、
珍しく蛾の寄っていない街灯の光だけだった
「ん〜なんか遊ぼっか!」
『ブランコとか?乗る?』
公園には、中央に大きな常緑樹、
それを囲むように、ジャングルジム、シーソー、
滑り台と砂場、ブランコ、ベンチがあった
「いいね
…あー落ちたらどうしよw」
『流石に落ちはしないでしょw
…運動音痴の君のことだから、
保証はしないけど』
僕らはブランコに乗った
「50m走たった1本で息が切れる人に
言われたくないね」
『お互い様ってことでしょう?』
虫や野良猫の姿さえ見えないここには、
静けさが満ちて、
公園の隅々にまで沁みていた
「てかさ、随分と雰囲気変わったね
想像以上で、ちょっとびっくりした」
『そう…かな…?
いや…うん、そうね、
かなり変わったんじゃないかな、多分』
特にどちらが高く漕げるか試そう!
なんてことはなく、心落ち着くペースで
小さく小さく揺られながら喋っていた
「うん…だいぶ明るくなったと思うよ」
『…そうだろうね
もう、あの頃の僕は今の僕じゃないから』
街灯がチカチカと点滅し、
またぼんやりと光り始めた
「…ほんと、強くなったね」
『おかげさまで』
どこかで、鳴き声が聞こえた気がして、
木々を轟かせる一際強い風に、
隣の友人が微かに反応したのがわかった
「その調子だと、上手くいってるんでしょ?」
『まぁね
友達もできたし、クラスにも馴染めてるし
いじめとかもない
勉強や部活もそこそこ頑張ってるよ』
ほっと息をつき空を見上げた友人に釣られて
僕も天を仰いだ
「…よかった
俺さ、向こうに行ってから、ずっとずっと、
それだけが心配でさ
自分のことなんてどうでもいいくらいで」
『そんなに…
…嬉しい』
そういえば、
昼間は…いや、友人がここに訪れるまでは
雲なんてひとつもなかったような
『でも…僕はもう大丈夫
この先、何があるか分からないけど、
きっと大丈夫
今なら心からそう思えるんだ』
「…その言葉が聞きたかった
その言葉を、君の口から聞けただけで、
ここに来た甲斐があったって思える」
やがて月が顔を出して、友人の顔が
白く照らされているのが見えた
『…』
「よかった…」
僕の方をまっすぐ見て微笑む僕の友人は、
うっすらと全身が透けていて、
友人越しに公園の遊具が見えた
公園の入口で会ったときは、
そんなことなかったのに
彼は、雲の晴れた明るい夜空を見上げ、
目を閉じた
そして、祈るように手を組んで、
呟くように小さく、でも強く、言った
「君の全てが上手くいきますように」
彼は冷たい夜空に消えた

2/3/2023, 9:40:32 AM