Shun

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"脳裏"

 ああまたこれか。もう何度この状況になったか覚えていないが、こうも何度も同じ状況に陥ると流石に此処が夢の中であることぐらいは瞬時に理解する。
 この夢は必ず俺が包丁を握りしめた状態で始まる。俺が体を動かそうとしてもびくともしないのに、体は勝手に行きたい方向とは真逆へと歩いていく。

だめだ、そっちはだめなんだ!!

そんな思いとは裏腹に足は動き続ける。やがて突き当りまで来るとそこには妹が立っていた。

…ああ、やっぱり。

俺は包丁を振り上げると妹に突き立てた。俺の意思とは関係なく動く体を止めることはできない。それは何度も経験して理解しているのに抗うことはやめられない。せめて目だけでも閉じたいと思うがそれすら叶わず、無抵抗の妹を何度も何度も刺し続けていく。

もう、もうやめてくれ…。充分バツは受けただろう。まだ許してもらえないのか。
『許される時なんて一生来ないんだよ、お兄ちゃん。これから先もずっと自分の犯した罪を抱えて生きていくの。』

ふと妹の声が聞こえた気がしてハッとすると、未だ刺され続けている妹は歪んだ笑みを浮かべていた。


『マタネ』


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気づけば自分のベッドの上だった。やはり夢であることに違いはないのだ。しかし妹のあの歪んだ笑みははっきりと脳裏に焼き付いている。
 もうすぐ妹の初月忌。これからもきっと俺は妹を殺し続けるのだろう。これは終わることのないバツなのだから。

11/10/2024, 6:22:39 AM