約束
「でも、これからも俺の隣で本、読んでてくれる?」
すぐに答えを出すことはできなかったけれど、私は今も彼の隣で本を読んでいる。あの頃よりも、もっと近い距離で、本を読んでいる。あれから続いてる、約束。
本を読むのは私の影響だと彼はいうが、真面目な面を持ち合わせていたことは知っていたし、なんだか律儀なところがあるから、私に合わせてくれているのかなぁと思っている。私の隣で、静かにページを捲っている。
彼の隣は心地いい。初めは、ただドキドキして本の内容が入ってこなかったが、今は本を読む時に彼に引っ付いているのが、当たり前になった。彼の体温を感じながら、ページを捲る時間が心地いい。
ふぁぁ…
大きな欠伸。
ゴロンと体勢を変えた彼は、私の膝に頭をのせる。
「なぁ、そろそろかまってよ」
「あと、もうちょっとやから、待って」
「ん…」
また、ページを捲る音だけが響く。
パタン
「お待たせ」
「んー…待ちくたびれた」
そっと私の頬に、彼の唇が触れる。
「ご飯、行くか」
顔が熱くなる。
彼の唇が触れたところが、火傷したみたい。
こんな些細なことなのに、まだ慣れない。
「可愛いなぁ」
彼の隣で、約束を続けていたい。
3/4/2025, 1:56:42 PM