「世界に一つだけなんだ。君がどんなに君のことが嫌いでも、僕にとっては、君は君だけなんだ」
彼の言葉は、言霊のようだと思う。
彼の言葉には力があって、心に響かせる事が出来る。それがわかっているから、彼は決して人を傷つける言葉は言わない。
愚痴はたまに聞くけれど。
それでも彼は、素敵な言葉しか紡がない。
優しくて、温かくて、けれど、人一倍傷付いた人。
「優多(ゆうた)、最近眠れてる?」
「うーん。あんまり、でも、今はそういう周期なだけだから」
優多はこう言うけれど、何だが心配。
「優多、眠れないなら、外に出ない?
今日。お月様とっても綺麗なんだよ。」
私の提案に優多は賛同してくれた。
私と優多は起き上がり、カーテンを開け、ドアを開け、ベランダに出る。
夜風が優しく通り、月明かりでとても明るい夜だ。
「佳織は?眠くないの?」
「眠くないよ?優多が寝てから、私は寝たいの。」
「あはは、何だそれ。」
「…………優多は、優しいひとだよ」
「えっ?」
「優多は気が付かない内に誰を助けてて、知らない内に傷ついてるんだよ?
それに優多はちゃんと気付いてる?」
優多は少し俯いて沈黙したまま、静かに私の手を取って繋いできた。
「前に、優多が言ってくれた言葉で、私は前よりも大丈夫だって思えるようになったんだよ?」
優多は、自分の言った言葉を覚えていなかった。そんな優多に言ってくれた言葉を伝え、私が救われた事を伝えると、優多は眉毛をクシャッとして泣きそうな顔になりながら、
ありがとう。と言ってきた。
私は最近少し眠れなくなっている彼に、少しの安らぎを与えられただろうか。
私は優多が好き。
その気持ちをちゃんと伝えたい。伝えて生きたい。
優多の様に、言葉に力を宿したい。
優多の様に、優しくなりたいから。
9/9/2023, 5:04:29 PM