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【喪失感】

⚠ネタバレ注意  進撃の巨人
視点:リヴァイ・アッカーマン

壁外調査に行くたびに仲間が減る。
こちらの事情もあり、死人を行方不明者として処理するくらい朝飯前だ。
だが、それほど親しくなくとも知人が死ねば悲しくなる

思い出しては度々
あいつらの家族はどんな人だったか。
帰りを今も待っているのか。
どんな気持ちで我が子を手放し戦場へ行かせたのか……
こんなことを考えることがある。

「リヴァイ兵士長!娘が世話になってます!
ペトラの父です!娘に見つかる前に話したいことが――――」

耳が痛くなるほど聞いたか。
名前や内容は違ったが…
どんな面して聞けと言っている。

そんなことはもう慣れたものだった……



「それで、巨人の生態を探っていると次の発見が――」

「おい、クソメガネ。もうモブリットと俺以外聞いてねぇ…。おまけに内容も先が見えねぇ」

「あぁ、そうだねごめん。まとめるよ。とりあえずここから言えることは巨人の―――」

毎月のように行われるこの巨人の実態調査の報告会は地獄と化す。
耐えられるものがなかなかいないもんだから、毎度真新しい顔がある。

5年も付き合えばこの長話も慣れたもんだが、
新兵上がりの中等は椅子に座っているのもままならないだろう
揃いも揃って死人の顔をしていやがる


こんな18時間以上も話すような異常な面を持ったやつがいたりするが、5年の信頼感は高い。

一番死に急いでいる気がするが
お前はまだだと言わんばかりに
毎度いきて返ってくる。

そんなやつでも、どうしてかもういなくなってしまうらしい

「今、最高にかっこつけたい気分なんだよ
………このまま行かせてくれ」


なんと声をかけるべきだったのか、
分からなかった

「心臓を……捧げよ」

「………

ハハッ、君が言ってるの初めて聞いたよ」

目の前でいなくなるやつにかける声なんて、
用意したくない
エルヴィンには申し訳ねぇことをしちまった

そして、これがこいつの顔を見る最期なのか

どこか寂しく思うのは

あの長話がもう聞けないからだろうか


追記作品【楽しみ】

こんな世界に生まれても、
人間は楽しむことをやめることはできなかった――――――

「ほら行くぞー!!!オ゙ラっ!!」

ぼふっ!!
白い雪玉が誰かの顔面に当たる

「あたり~!次鬼はエルヴィンねー!!」ヒャフーーーー!

ハンジの軽快な声が響く

「全く、こんなことをしていて良いのか。エルヴィン」
リヴァイが眉を潜めながら話す

「今、我々はこれしかできない状況にある。
時が経つまで待とう」

エルヴィン・スミス
目も眉も鼻も口も、雪に埋もれて全く何も見えないが
何処か強い声を響かせながら一人佇んでいた。

「おい…あれはどうなってんだ……
エルヴィン団長の顔面が真っ白に…」

「ジャン、隣にいるリヴァイ兵士長の方がもっとやべぇぞ…」

2人で話していると真後ろからハンジの声がした

「二人とも何棒立ちになってるだい、
このままじゃやられ――――」

言葉が終わる前に、ジャンとコニーは雪だるまになっていた。

「リヴァイ…、いつ鬼になったんだい…」

「あぁ?お前らがそこでのんびり会話してる間だ」

「いや、私さっきエルヴィンを鬼にしたよね?つい数十秒前」

「エルヴィンはそこで紅茶をすすって進まねぇから俺が鬼になった」

「で、次の鬼がコニーとジャン…?」

もはや雪景色に同化している2人が攻撃する様子はない

「こいつらが動かなきゃまた俺が鬼になる」

そう話すリヴァイの手には雪には見えない白い物体が握られていた。

9/10/2024, 12:23:34 PM