お否さま

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脳裏

浮かんでは押し込んで。
押し込んではぷわりと浮かぶ。

何度押し込んでもそれは消えない。
一時的に歪んで見えづらくなるだけ。いつかはくっきりと見えるようになる。
この行為は傍から見れば無駄なのだと思う。無心で続けられて、その上で何の困難もない。時間という制約を破らなければ、いつまでもいつまでも同じことを続けるだけなのだから。
なら、無理に力を入れず見ていればいいのか。それもまたひとつの答えだ。向き合い方は人それぞれ。
だが、私は何度も繰り返すことにも何かしら意味があると思っている。繰り返すこと自体に意味がなくても、繰り返した時間や意思に意味が宿るのではないか、それを自分の意思で選ぶことに意味があるのではないか、と。何度も見ることは、己の安定を見つめ直すことに繋がる。自身の力を使って自然的なシステムの1部になる。何も変わらず、良いことも起こらないのなら、悪いことだって怒らないはずだから。そしてその行為はある種の心の調律とでも言うような、不思議な集中力と快感をもたらしてくれる。周囲と溶け合うようなそんな感覚。
無理に受け入れる必要も突き放す必要も無い。
少しだけ見えないところに置いて、浮かび上がったら、焦点を合わせてまた見えないところへ押し込むだけ。意味は無いが、きっと何かをもたらしてくれる。

「何してんの、そろそろ行くよ」
「はーい」

プールから浮かんだボールを持って、私は帰路へつく。水音と喧騒が残ったまま歩く道、いつもよりも深く沁み入った。

11/10/2024, 4:40:13 AM