前々回から地味に続いておったおはなしも、今回でようやくひと区切り。
最近最近の都内某所に、後輩もとい高葉井という女性がおりまして、
前々回あたりのおはなしで、幸福な推しの夢を数時間、諸事情により見ておったのでした。
「めっちゃリアルだったの」
「そうか」
「もう、8K16Kくらいの高画質で、無圧縮くらいの高音質で、ツー様が私に、コーヒー」
「そうか」
「めっちゃ、リアルだったの……」
「高葉井、」
「何故かキャンパーだったし、焚き火の民だったけど、言動全部解釈完全一致だったの……」
「高葉井。寄贈本がだいぶ貯まってきてる。
仕分けか装備のどちらかを頼みたい」
「リアル……」
「こ う は い」
ポワポワ、ぽわぽわ。
推しが夢に出てきて、大歓喜の高葉井です。
幸福な夢を見て、なにより久しぶりに十分な量の睡眠をとりましたので、長年の睡眠負債も軽減!
頭がとっても、スッキリしています。
良い体調で家を出て、良い気分でバスを待ち、
心体双方軽やかに、自身の職場に到着です。
高葉井は都内の私立図書館に勤めておりまして、
そこは、夢に出てきた推しが登場するゲームの、
まさしく、原案と原作が爆誕した聖地でした。
「やっぱ人間、寝なきゃダメだよ先輩」
「そうか」
「寝れば夢の中で推しと会えるんだよ先輩」
「今なら寝なくてもツバメさんとは会えるだろう」
「そっちは公的なツー様。こっちは私的ツー様」
「はぁ」
「また会いたいなツー様」
「頼むから仕事をしてくれ高葉井」
できるなら今日もあの夢を見たい
とか、
なんならずっと、あの夢を見てたい
とか、
いっそずっとずっと、あの夢だけを見てたい
とか。
高葉井のポワポワは長くながく続きます。
そりゃそうです。
高葉井の夢に出てきた推しを、高葉井はずっとずっと、だいたい中学生くらいの頃から、
専門用語も解釈も見解も何も知らぬままに、
ただ一心に、推しておったのです。
その推しが超現実的な夢に出てきたとあっては、
そりゃあ、脈拍数も血圧も、上がるのです。
「先輩の近所のあの稲荷神社にお参りしたら、またツー様、夢に出てきてくれるかな」
「なぜ」
「だってあそこ、ご利益ありそう。本物のコンちゃん居るもん。叶えてくれそう」
「はぁ」
「神様仏様子狐様」
「稲荷は中途半端に頼ると後が怖いらしいぞ」
睡眠大事。夢大事。推しは更に大事。
ポワポワ幸福に口角の上がる高葉井は、
ポワポワ幸福に図書館の仕事をこなして、
外を見て、天上を見て、上の空になります。
「こうはいさん」
「大丈夫だいじょうぶ仕事はしてる」
「高葉井さん」
「だから仕事はしてるってば先輩」
「私です高葉井さん」
「はいはい新しい寄贈本はそこの箱にどうぞ〜」
ポワポワ、ぽわぽわ。高葉井は夢見心地。
そのわりに図書館の仕事はミスなく為しています。
まったく器用なものです。
「あの。高葉井さん」
「はいはい後輩の高葉井は推し夢を燃料に絶賛高速仕事中ですよー」
推しは高葉井の燃料として、極上高品質であるらしく、高葉井の仕事は一気に片付いてゆきます。
「おまえ、ツバメさんが居ると仕事が早くなるな」
「なりまーす。ルー部長も居れば爆速でーす」
気がつけば高葉井、見た夢を燃料にして、
その日の仕事の7割を、午前中で終わらせます。
「夢っ!おやすみ!」
「メシはどうするんだこうはい……?」
「知らない!夢!夢を見てたい!」
「はぁ」
昼休憩にはどこからともなく、枕を出してポフン。
秒でイントゥーザドリームしましたとさ。
「夢を見てたい」がお題のおはなしでした。
おしまい、おしまい。
1/14/2026, 7:35:18 AM