犀川のほとりで 誰かが
顔を覆うように手のひらをみつめていました
不意に立ち上がった彼の人は
月光を浴びて 細くて美しいのです
若緑の着物を着ています
首は青白くて折れそうです
手のひらを月に透かす彼の人は
白い幸せの中 ばったり倒れそうです
くずおれてしまった彼の人が
それでもなお食い入るようにみつめなさる手は
抑えようもなく小刻みに震えています
私はそっと近づいて顔をみたいのです
けれど月が睨んで 私がゆくのを拒むのです
心狂い躍る
特別な夜のことです
1/21/2024, 11:30:38 AM