紗夢(シャム)

Open App

【10年後の私から届いた手紙】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

2/14 PM 6:45

「天明(てんめい)くん、喜んでくれて
 良かったね、宵ちゃん」

 無事にバレンタインチョコならぬ
 バレンタインお煎餅を渡して。
 天明くんが、宵ちゃんの選んだ
 カレー味を「いいな」と言って
 笑ってくれたので、
 わたし的には今回のバレンタインは
 大満足な成果だった。
 もしも10年後のわたしから、
 今日のことについて手紙が届いたとしたら、

 『宵ちゃんをけしかけて、
  天明くんにバレンタインの贈り物
  したのはグッジョブだったよ!』

 ……と、褒め称えてくれてるかもしれない。

「じゃあ、2人ともまた明日ね。
 真夜(よる)くん、今日は遅くまで
 待っててくれてありがとう」

 2人の家の前に着いたので、
 お別れの挨拶をする。
 バイバイ、と手を振って
 歩きだそうとすると。

「暁。ちょっと待ちなさい」
「なになに? どうしたの宵ちゃん」

 呼び止められて振り返る。
 いったん家に入ったかと思ったら、
 宵ちゃんはまたすぐに外に戻って来た。

「ほら、これ」
「え……」

 目の前に可愛くラッピングされた
 トリュフチョコレートが差し出される。

「えーと。わたしに?」
「アタシも猫のチョコ貰ったしね」
「……もー、宵ちゃん! わたしに
 手作りのチョコくれてどうするの!
 こういうのは本命の人にするんだよー。
 でもありがとう、大好き!」

 きっと10年後のわたしからの手紙も、
 『今も宵ちゃんが大好き』という
 言葉で締めくくられている気がする。

2/15/2023, 4:27:28 PM