—影の救い—
好きな人にフラれた。
学生時代から、ずっと想っていた人だった。
最近偶然再会できたから、もしかしたらこれは『運命』なのかな、なんて期待したけれど、舞い上がっていたのは私だけだった。
「なんでよ……」
彼の元から逃げるようにしてここまできた。
ここは、私のお気に入りの場所。
何か辛いことがあった時は、いつもここで気を落ち着かせる。
「失恋したのか」
男が近づいてきた。私の幼馴染だった。
「うるさい……!」
「だからあいつはやめとけって言ったんだ」
彼はどんどん近づいてくる。
「来ないで……」
私はそう言っているのに、彼は止まらない。
「姉上が昔に言っていたんだ。女性は弱った時が攻めどきだって」
彼は、私の目の前でしゃがみこんだ。
「この時をずっと待ってた。俺は性格が悪いんだ。君は知らなかっただろうけど」
ハンカチをすっと差し出してきた。
「俺は、十年以上も隠してたんだ。今だけは許してくれ」
私はぐしゃぐしゃになった顔を上げた。
彼の穏やかな笑みが、涙で滲んでみえる。
私はそれを受け取って、溢れ出てくる涙を拭った。
彼のことなんて好きじゃないのに、安心してしまう自分がいた。
お題:好きじゃないのに
3/26/2026, 5:22:41 AM