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あなたの嫌いなところなんて何一つなくて、ひとつだけあげるとすれば僕の前からいなくなるところだ。

私のそれは幼い子のこねる駄々みたいなものだから。

と自分の感性と正義感を、肩を竦めて笑いながらあなたは呟く。そんなことないなどと言う権利は僕の体のどこにもなかった。

そういう自傷的なあなたの心が、キラキラとボロボロになっていくのが僕は一等美しいと思ってしまっているからだ。

日本海側のこちらはまだ寒くて桜は咲かない、木々が静かにこれから花が咲くのを待っている中に梅がちらちらと混ざりこんでいる。

淀んだ曇りの空に冷たい湿度が重たく体にのしかかってくる。

多分、この世にこの人より弱い人も美しい人もいないだろうなと思う。恐らくそんなことは無いと分かっているのに。

目の前で見せるこの人の言葉が振る舞いが僕にそう思わせる。この世界に晒されてボロボロになっていくのを横で見ていたいと思う。
この世界に慣れないで、普通の人間に成らないで。ずっと誰かのために傷付いていて、お願い、おねがい、おねがい。

霧のような小雨が降り始めた、並木沿いを通って帰ろう。

(特別な存在)

3/24/2023, 6:05:32 AM