明日世界がなくなるとしたら。
ドーム内でそんな噂が流れ出したのは、きっと不安があったからだろう。
定期的なドーム外からの連絡が途絶えて十日。五日くらいならよくあることだけれど、今回のは少し長かった。
外で何か起こっているのではないか。
そんな不安はこれまでだってあった。でもそれを口にする人はいなかった。だけども今回は違った。
「外から人が押し寄せたならどうする?」
誰かの言葉を皮切りに、懸念は一気に膨れ上がる。
この清浄な世界が終わりを迎えるのではないか。ここも塵に覆われるのではないか。これまでドームに守られてきたこの命が、ついえるのではないか。
「無様だよな」
そんな人々を俺は笑う。
いつだって明日の保証なんてないのに、今が続くような気がしていたのがおかしかったのだ。このドームを命懸けで守る俺らのことなんて気にせず、生きてきたつけを払う時が来たのだ。
明日世界がなくなるとしたら。
俺はきっとそれを願ってる。
終わってしまえばいい、と。あの塵にまみれた世界を、見てみるといいと。
5/6/2023, 11:19:02 AM