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 薄暗い廊下を抜け、扉を押し開けた先にあったのは所謂宝物庫というものだった。壁や床の全面が金色に輝いており、その真ん中には緋色の宝箱が一つぽつんと置かれていた。
 なにかを警戒するように一つ一つ歩を進めた私は、ゆっくりと宝箱に手をかける。装飾が豪勢な割にその重さは特になく、簡単に開いた。中には古びた本が一冊入っていた。

「魔導書だ......」

思わずにやりと呟いた。これでやっと開放される。そう思った瞬間頭の中から誰かの声がした。

「汝の望みは、絶対的な力か?否」
「......は?」

 不自然なところで跡絶えた声に思わず首を傾げる。望みを否定するだけ否定して声の主は帰ったらしい。
 ついでと言わんばかりに魔導書は灰となって散っていったし、気付いた時には活気あふれる街中に放り出されていた。数ヶ月かけた作戦は無事水泡と帰した。

「私以上に力を欲してる人なんていないでしょうがああああああ!!!」

これはある一人の少女がこの世界に順応するまでのお話である。

「宝物」

11/21/2023, 9:41:38 AM