おさしみ泥棒

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「なあ相田。likeとloveの違いってなんだと思う?」

 放課後の教室にて、向かいに座った沢村は、突如そんなことを問いかけてきた。
 俺はシャーペンを動かす手を止めて、顔を上げる。沢村はいたって真剣な顔で、俺を見つめ返した。

「……えー。likeよりloveのほうが、なんかこう、抑えきれずに溢れ出す感じ?」
「なにが溢れ出すの?」
「パトスとかリビドーとか。あとジェラシー」
「勘で喋ってない?」
「わかんないんだから勘で喋るしかないだろ」

 言って、俺は学級日誌を書くのを再開する。一時間目、数学。備考、みんな寝てた。二時間目、化学。備考、実験をした。三時間目、世界史。みんな寝てた。

「四時間目ってなんだっけ?」
「おまえさ、真面目に考えろよ」

 沢村は俺をじとりと睨んだ。これって俺が悪いのか? 俺は今、真面目に日直の仕事をやってるんだが。さっきから業務をサボっているのは沢村のほうだ。

「俺は真面目に聞いてんだよ」
「……まあマジな話でいうと」

 俺はペンを置いた。

「相手のために死ねるかどうか」
「君のためなら死ねる、が愛?」
「そう」

 俺はうなずいた。正味、俺に愛のなんたるかはわからない。けれども何かしら答えない限りはこのよくわからない尋問は終わらない気がするので、とりあえずそれっぽいことを言っておいた。
 すると沢村は、そうか、とつぶやいてから、ふいに俺の手をがしりと掴んだ。それからまっすぐに俺の目を見据えて「相田」と呼んだ。

「なに」
「それならどうやら、これは愛だ」
「え?」
「いま頭の中で一回死んでみたんだけど」
「は?」
「相田のためなら俺、全然いけるわ」
「へ??」
「あと四時間目は国語」

【テーマ:I LOVE…】

1/29/2026, 11:59:31 AM